最近のインバーターは、性能の向上とともに誰でも扱える操作の簡便性や小型・軽量化、低騒音化、安全性、ネットワーク対応が挙げられ、使い易さと省エネ性の向上が重視されている。
作業工数が従来品比1/5に
周波数やパラメーター設定がジョグダイヤル式コントローラーを回すだけでできる機種が一般化しているが、一方でこうした複雑で面倒なパラメーター設定を不要にしようと、ファン、ポンプ、コンベア、昇降機などの用途を選択するだけで、自動的に最適なパラメーターに設定できる製品もある。また、配線を簡単にするための着脱式制御端子台の採用も一般的になっているが、最近はパラメーターバックアップ機能付きの端子台を採用する製品もあり、ユニット交換時に制御配線とパラメーター設定が不要になることで、作業工数が従来品比で約5分の1になるといわれ、メンテナンスの省力化などに大きくつながる。
インバーター各社とも良好なトルク特性をアピールしており、短時間最大トルクを3・7kW以下で駆動周波数1Hz150%から0・5Hz200%が増えている。短時間過負荷耐量も200%で0・5秒から3秒にアップさせ、過電流トリップになりにくく、ねばり強い運転を可能にしている。しかし、こうしたなかで過負荷定格を、軽負荷と重負荷に分けることで定格出力電流を調整し、最大適用モーター容量の拡大によるインバーターサイズの小型化を可能にしている。
インバーターとモーターの関係も変化している。インバーターで駆動するモーターも、標準三相モーター、高性能省エネモーター、回転子に強力な磁石を埋め込んだIPMモーターなどがある。特に、永久磁石埋め込み形同期モーター(IPM)や表面永久磁石形同期モーター(SPM)を使った製品が市場に投入されてきており、誘導モーターより7~10%効率が良くなるといわれている。しかし従来、こうした高効率モーターの駆動には専用のアンプが必要であったが、これをインバーターのアンプを使い、誘導モーターと同期モーターのどちらでも駆動できるインバーターが各社から発売され始めた。
グローバル対応可能な機種も
省電力率、省電力量、省電力平均値などの省エネ関係の数値が、インバーターの操作パネル上のほか、出力端子やネットワーク経由でも確認でき、省エネの効果が一目瞭然となる。設備メンテナンスの点から、モーター累積運転時間やインバーターの運転・停止などの起動回数を、自動的に積算できる機能を内蔵している。インバーターは、セットメーカーの機械に組み込まれて海外で利用されることも多いが、制御ロジックのシンク/ソースの切り替えができ、グローバル対応が可能な機種も数社から発売されている。
小型・軽量という面では、盤や機械の省スペース化に対応した小型機種が、各社から豊富にラインアップされている。
シンプル構造の名刺サイズのものもあり、スピードコントローラーの置き換え需要などとしての搬送用途などが増加している。異なる容量でも高さ・寸法を統一することにより、盤内のレイアウトの容易さを図った機種や、取り付け場所に合わせて「サイド・バイ・サイド」で密着して取り付け設置が可能な製品も一般化している。
縦長スリムで保護構造重視
需要が拡大している空調用途では、不可欠である力率改善DCリアクトルや零相リアクトルと容量性フィルターを1つのユニットにしてフィルターパック化して標準で装備し、配線工数と配線数の削減、省スペース化の実現を図っている機種もある。特に今後の期待市場である海外向けでは、グローバルスタンダードともいえる縦長スリム形状で、保護構造を重視した機種開発を進める傾向が強い。
ユーザープログラム機能を搭載したオプションカードや、簡易PLC機能を内蔵することで、パソコンを使ってインバーターのカスタマイズ化が図れる製品も登場し注目されている。
最近は、USBコネクタをインターフェイスに採用したインバーターが増えている。パソコンからインバーターのセットアップソフトウェアを起動させて設定の支援を行ったり、高速グラフ機能によるサンプリング、ユーザープログラムのコピーユニット機能などが活用できる。さらに、ラインシステムなどでベクトルインバーターとシステムコントローラーの演算制御部分を統合化した新コンセプトの商品も登場した。
部品の長寿命化設計進む
インバーターの長寿命化に向けて、コンデンサーや冷却ファンなどの部品寿命の長時間化設計も進んでいる。特に空調ファン、ポンプなどに使うインバーターは設置するとリニューアルするまでの期間が長く、より一層の長寿命製品を求めている。各メーカーとも主回路のコンデンサー寿命は10年前後を目安にしているが、15年の長寿命をアピールしているメーカーや、インバーター劣化診断システムサービスをビジネスとして展開しているメーカーもある。
セーフティ機能を搭載
セーフティ機能の搭載も大きなセールスポイントになってきている。従来、地絡保護や瞬時停電時の自動再始動などに対して、コンタクターなどを周辺配置して対応するのが一般的であったが、この機能をハードワイヤベースブロック内蔵で、安全規格のEN954―1のカテゴリー3などに対応させた。誤操作などを防ぐためにインバーターにパスワードを設定して、パラメーターの読み出し・書き換えを制限できる製品もある。
インバーターの効率をさらに高める半導体として、SiC(炭化ケイ素)の開発が進められている。現在のSi(シリコン)半導体に比べ電力損失が約70%抑えられると言われている。しかしまだ本格採用とはなっておらず、今年11月に開催されるSCF(システムコントロールフェア)辺りで商品化が見込まれている。
インバーターでの省エネ、高効率モーターでの省エネに加え、次の省エネとして「電源回生による省エネ」が求められている。電源回生には、電源回生コンバーターや電源回生ユニット、マトリックスコンバータなどの機器があり、電力を使用しながらも電力を回生して生み出すという、省エネ効果がある。
こうした複数のインバーター技術を組み合わせることで、新たな市場創出が期待される。