PCS需要が市場底支え
汎用インバーターの市場は、経済産業省の機械統計をベースにまとめた日本電機工業会(JEMA)の生産統計によると、2011年度実績702億円に対し、12年度は548億円と22%減少した。省エネニーズを背景に大きな落ち込みもなく着実に市場を拡大してきたインバーターであるが、工作機械、ロボットなど生産が伸び悩んだ影響を受けて、2桁の減少になっている。国内は全般的に工場の設備投資が厳しく推移する中で、省エネニーズに対応して、ビルや空調のリニューアル需要が大きく市場拡大に貢献した。PV(太陽光発電)の急増でPCS(パワーコンディショナー)などの需要にも大きな波及効果が出ており、インバーター市場を底支えしている。しかし一方で、昨年は円高基調が継続したことで、工作機械やロボットなどの輸出が伸び悩んだ。特に大きな市場である中国は、欧州市場の不振から欧州向け販売が低迷して、中国市場への輸出も大きな影響を受けている。
今年に入ってアベノミクス効果もあって急速に円安が進行しており、輸出増加につながることを期待している。JEMAでは、13年度の汎用インバーターの生産見通しを537億円(前年度比2%減)としているが、JEMAの計画を立てた年初に比べると、その後の円安は予想以上の水準となっており、輸出が回復基調に入ることは確実な状態。現状では、今年度の売り上げを前年度比10~20%増を見込んでいるインバーターメーカーが多い。円安効果による輸出の増加と、国内での省エネニーズに対応したリニューアル需要が広がることを期待している。
海外も、中国に加え、他のアジアの新興国でもインバーターの持つ省エネ効果に期待して、採用を進める動きが活発化している。さらに、北米も資源開発などに絡んでインバーター需要の拡大が見込まれている。中東、南米などの新興国での需要増など、欧州を除く各地域で伸長が見込まれている。
モーターの高効率化も加速
モーターへのインバーター装着率は年々上昇し、現在は30%程度にまで高まっていると見られるが、誘導モーター(IM)や同期モーター(PM)にインバーターを装着することで、インバーターが自動的に最大効率運転を行ってくれるという省エネ・省力化などの効果が、徐々に評価・浸透しつつある結果といえる。モーター自体の高効率化も加速しており、特に海外では省エネモーターの使用が義務付けられつつある。
IEC60034―30では、モーターの効率クラスが規定され、効率の低い順に、IE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)、IE4(スーパープレミアム効率)となっている。
アメリカでは、EPAct法(米国エネルギー政策法)でモーターの効率基準が規定されていたが、10年12月からはEISA法(米国エネルギー独立安全保障法)で新たな効率基準が決められた。この結果、米国へ輸出されるモーターは、装置などに組み込まれるモーターを含め、同法で規定された効率基準値を満足したモーターはCCナンバー(適合証明番号)を取得し、モーター本体銘板に表示することが決められている。
日本も15年4月から「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」でトップランナー基準が設けられ、IE3規制が開始される。日本は今まで、電圧幅や電流サイクルの違い、特注品モーターの使用比率が海外に比べ高いことなどから、こうした高効率モーターの採用が法的にも遅れていた。インバーター化はこうした背景にあって、比較的容易に省エネ化を図れるだけに、装着率がさらに高まることが期待される。