事務所の窓から眺めると、いつの間になったのか更地が見え、他方で大型クレーンの背がどんどん高くなっている建築物も目に入る。オフィスビルや高層マンションの建設が増え、社会の活力を感じる。国土交通省によると、主要都市の中心部において、地価は下げ止まってきているという。
だが、現在の大都市再開発は、老朽化したビルやマンションの耐震対策で建て替えているもので、供給不足による建設ではない。まだまだ供給過剰にある。それなら、ビルを近代工場に建て替え、高層階に上下動する無人化生産ラインを構築すれば、平方メートル当たりの生産性が上がり、価格競争力も高まる。都市部のビルの需給バランスもとれる。
ある製造業の経営者に、そんな途方もないことを考えたと話したら、時間の無駄使いだ、地価より知価と言われた。成熟期、衰退期にある市場の製品でも研究開発テーマは多い。誰でも思い付くようなローテクのハイテク化に目を付け、開発すればよい、と。ただし、アイデアは面白くても、顧客の要求に沿ったものでないと、商売にならないとも付け加えた。
IT技術の知識がなくても利用できれば、新しいモノの価値は生み出せる。いろいろな情報が簡単に入手できるので、日本は「一億総開発者」の時代に入ったが、残念ながら誰でも売れるわけではない。売れて初めてモノに価値がつく。ということは、地価も知価も一緒で、売れないと上昇しない。目利き商社が存在してもいい。