最近の温度調節器(計)製品傾向は、軽薄短小化、高速・高機能化、視認性や操作性の向上、ネットワーク化対応、入力種別のマルチ化などが進んでいる。
奥行き60ミリ切る製品増加
外形寸法は、DINサイズの96ミリ角から、48ミリ×24ミリまで各種あるが、搭載機器・装置の小型化傾向に合わせ小型・薄型化傾向が強まっている。特に薄型(短胴)化については、最近は60ミリを切る製品も増えており、機器の省スペース化につながっている。
視認性では、文字が遠くからでもハッキリ確認できるように数字表示部の大型化傾向が目立つ。表示素子はLED表示が多いが、LCDとバックライトを組み合わせた表示もあり、グラフやメッセージなどの表示も容易になる。
11セグメントのアルファベット表示機能、制御設定値やパラメータ設定、出力値アナログバー、偏差値トレンド記録表示、偏差アナログバー表示などのほか、5桁3段の表示も可能で表示の情報量が増大し、新規の顧客開拓につながっている。表示色も赤、緑、黄などカラフルになっており、状況判断をしやすくしている。この表示色を変化させることで、安全性向上を図るタイプもある。
高速で高精度な処理ニーズに対して、各温度調節器(計)メーカーとも、独自の特徴を出したアルゴリズムで制御技術をアピールしている。
例えば「RSS(ランプ・ソーク・スタビライザー)機能」は、ランプ制御開始時の追従性向上とソーク制御移行時のオーバーシュート抑制を同時に行うことで、プログラムの制御性を一段と向上させている。また、植物のザゼンソウが有するフィードバック形発熱制御の特性を応用し、省エネ化などにつながる制御アルゴリズムも開発されている。
サポートソフトウェア充実
操作性ではダイレクト操作が可能なキーの搭載や、サポートソフトウェアの充実なども進んでいる。保守の簡単化では長寿命のリレー出力により、メンテナンスサイクルの長期化や、予防保全をサポートする制御出力のON/OFF回数のカウント機能などを備えている。
選定の簡単化では、アプリケーションの違いで入力センサが異なる場合でも対応が容易なマルチ入力機能や、各国の船舶規格に対応するなどグローバルなサポートサービス体制の強化などが挙げられる。
製造現場の熱処理工程は、工業炉など様々な分野で高度な温度制御が必要とされており、このため温度調節器や周辺機器の用途拡大につながっている。
半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造工程では、ステッパー、コータ・デベロッパーの高安定温度制御、チャンバーの高応答温度制御、ワイヤボンダーの温度制御、FPD焼成炉の多点温度制御、ウェットステーション薬液の温度・レベル管理、拡散炉の温度制御などに温度調節器が使用されている。ステッパー、コータ・デベロッパーには、1000分の1℃の分解能を持ち、電源電圧のわずかな変動にも対応する温度調節器が使用されている
シリコンウエハの熱処理が可能な拡散炉は、多数枚のウエハを処理容器内に収納し、ヒータで加熱して1000℃前後の熱処理をすることから、炉内の温度分布を均一にする必要があり、高性能の温度制御が必要になっている。
恒温恒湿の状態を保つための温度制御は、こうしたハイテク分野の製造工程だけでなく、あらゆる産業において、品質を向上させながら生産性を高めるものづくりに欠かせない要素になっている。
包装機械では、原料を処理する際にヒータによる加熱温度の調節・管理が重要である。ファジィ制御とPID制御で温度を安定させるため、デジタル入力によるオートチューニングの開始・停止指令のほか、ヒータ断線警報や温度警報機能が付いており、高品位な成形が可能となっている。
ネットワーク化が進む
このところの節電・省エネ対応から、温度調節の分野でも対策が顕著になっている。工業炉や食品機械などでは、予熱管理や待機電力などが生じるが、この電力を効率化できるかどうかが大きなエネルギー低減につながる。
この課題に対応するため、EthernetやModbusに対応し、PLCやコントローラなどとのネットワーク化が進んでいる。温度管理を装置ごとに連携し制御することで、最適なタイミングでの温度調節が可能となり、余分な電力消費などが防げる。
さらに、赤外線通信で簡単にセットアップでき、各種パラメータの読み書きやCAV形式でファイルの保存などが可能なタイプや、光通信タイプ、温調ボードとシーケンス制御・プロセス制御を組み合わせたシステムボードなどもあり、温度調節器(計)のパラメータ設定や管理などをパソコンで行うことも一般化している。
入力種別によるマルチ化
また、熱電対や測温抵抗体などのセンサからマルチ入力による温度制御も増加しており、入力種別によるマルチ化が進んでいる。直流電圧・電流にも対応可能で、湿度や圧力のアナログ量の制御を始め、ヒータ断線検知・警報機能、多点制御、カスケード制御、比例制御などが可能で、市場拡大につながっている。
日本およびグローバル市場で高い競争力を発揮している日本の温度調節器(計)メーカーであるが、中国、韓国メーカーとの販売競争が激化する中で、中国や新興国市場での販売体制強化に取り組んでいる。国ごとに地元の販売店の整備を進めたり、エンジニアリング力の強いところと協力してソリューション提案で付加価値を高める動きを強めている。円安でユーザーの海外販売も加速傾向であり、直接・間接で日本の温度調節器(計)メーカーにとって追い風になってくるものと思われる。