FA分野におけるPDは、各種コントローラの稼働監視やモニタリング、エネルギー使用量の表示、さらに制御指示などを行うタッチパネルディスプレイとして急速に需要が拡大している。各制御機器と直接接続することで、機器の情報を「見える化・生かせる化」し、情報を膨大に伝達することが可能で、機器の有効情報を最大限に生かすソリューション・システムとして市場を拡大させている。
日本電気制御機器工業会(NECA)では会員企業を対象にPDの出荷統計をまとめているが、2012年度は約400億円と前年度比で10%ぐらい減少した。
ゲートウェイ的な役割
PDは表示や操作だけではなく、各種通信・ネットワーク機能、データ入出力機能を備え、PLCや周辺機器を監視・操作できる装置としてゲートウェイ的役割を持つようになっている。例えば、自動車やFPD、半導体製造分野では、大型装置の作業効率化を図るため、PDにEtherNetを搭載し大型装置のネットワークに接続することで、手間やコストがかからない副操作盤として機能している。
特に、1人または少数の作業者チームで、製品の組み立てから検査まで担当するセル生産方式では、作業者一人が受け持つ作業の範囲が広いので、的確な作業指示を行うPDが採用されている。
また、民生分野では、店舗や家庭においてエネルギー管理のモニタリング機器として需要が拡大しているほか、外食産業では、顧客のオーダー端末用として小型、中型のPDが普及している。
半導体・液晶製造装置関連や電子部品関連において、スマートフォンやタブレットPC向けの生産が好調に推移しており、先行きへの期待が高まっている。自動車関連も堅調で、食品・医薬・化粧品の3品業界もトレーサビリティ問題も絡み、工場の「見える化」を推進しており、表示機器の需要が拡大している。
省エネ・蓄エネの観点から、マンションや一般住宅など民生分野でもエネルギー管理システムの導入が加速しているが、エネルギーの使用量を「見える化」し、無駄な電力使用のカットにつながる用途として普及している。無線型電力●●監視表示器も発売されており、計測したい箇所へ簡単に設置できる。
エネルギー監視や管理などのテーマでは、スマートハウスなどスマート分野での市場拡大が確実視されており、表示機器の市場拡大に繋がるものと予想される。伸長著しい太陽光発電分野は、昨年夏に電力の買い取り制度がスタートしたことから、表示機器の需要も拡大している。
機能面では、数年前まではPLCとコミュニケーションすることがメーンで、PLCの先にある各制御機器からの伝達量が少なかったが、最近では、PDと各制御機器をI/O制御で通信接続し、各制御機器と直接コミュニケーションを図ることで、各制御機器の情報をより多く「見える化、生かせる化」することができ、エラー・ステータス・位置情報などの有益な情報を膨大に伝達することが可能になっている。
また、従来は大型や中型の表示器にEtherNetを標準搭載し、大型装置のネットワークに接続することで副操作盤として機能させ、作業の効率化が図られてきたが、最近では3・4型の小型表示器にもEtherNetを標準搭載させ、主操作盤から離れた場所にある温度調節器やインバータなどの機器の近くに副操作盤として機能させ、現状確認や設定変更などに要していた時間や手間が削減できるようになった。持ち運びに便利なハンディタイプのPDはロボット操作向けなどを中心に普及している。
今年初めには、普及するスマートフォンやタブレット端末を有効活用するため、これらに対応した生産現場の遠隔監視ソフトウェアが発売され、好評を得ている。Android
OSやiOSを搭載したスマートフォンやタブレット上で、製造現場の表示器画面を監視・操作することができる。
無線LAN経由で通信
工場内では、無線LAN経由で表示器と通信が可能になり、複数の作業者が必要な大型設備などにおいて、より少ない人員で作業でき、生産現場での異常発生時に、事前に遠隔地からでもエラー内容を確認することができる。また、複数の装置の状態を手元のスマートフォンやタブレットで表示を切り替えて確認できるなど、作業の効率化が図れる。
さらに、指紋でセキュリティ認証が行える指紋認証ユニットや、タッチパネル操作に加え、ハードスイッチやランプを追加したいときに使用できるイルミネーションスイッチも開発・発売されてい
る。この両製品は、USBケーブルで表示器に簡単に接続できるほか、φ22ミリの丸穴取り付けに対応しており、スイッチやランプの代わりに取り付けることができる。
バックライトにLED採用
画面については、バックライトにLEDを採用し、消費電力の低減化や水銀レス化が進んでいる。表示部分にLCDを使用したタイプは、絵や文字、数字などより多彩な表示が可能である。しかも、同じ画面の中で何種類もの表示が可能なため、限られたスペースで大量の情報が表現でき、券売機や放送機器、ディーリングシステムなどのアプリケーションに採用されている。
表示素子にカラー有機ELを採用したタイプは、16〓6万5536色の表示ができ、リアリティのあるナチュラルな美しい画像が再現できる。LCDに比べ、小さな画面でも精細画像がハッキリと表示できるうえ、視野角も180度とあらゆる方向から視認できる。画面の切り替え時間も7msecと高速であることから、幅広い分野で採用が拡大している。ビデオ画像表示もでき、監視カメラなどによるラインの状況を映すことも可能である。
PDの用途が広がる中で爆発の危険性が高い場所で使える防爆タイプ、作業危険領域で使えるハンディタイプ、ワイヤレスで使用できる無線タイプなども増えている。防爆タイプは、石油・化学・薬品などのプラント現場でも従来の非防爆用に作成した画面データを使用できることから、作画工数の削減はもちろん、環境特性も高いことから使い勝手が良いのが特徴。
ハンディタイプは、軽量で操作性が良く、危険時には安全な操作が確実にできることがポイントとなっている。ワイヤレスタイプは操作場所がフレキシブルであるのが特徴だ。
懸念されるウイルス感染
このところ工場などの生産設備を制御するシステムにもコンピューターウイルスへの感染が懸念されている。最近は制御システムのオープン化が進んでいることもあり、制御システムが外部ネットワークと接続される機会が増えている。また、USBなどを使って保守点検やプログラムのコピーなども頻繁に行われて、コンピューターウイルスへの感染がしやすい環境が生まれやすくなっている。
PDは、PLCなどと同様、外部ネットワークと接続されることも多いことから、こうしたコンピューターウイルスへの感染や、外部からのサイバー攻撃の対象にもなりやすく、使用にあたっては十分な対策と慎重な運用が求められてきている。
NECAでは、PDをこうした危険から守るために、「プログラマブル表示器を含む制御システムセキュリティ運用ガイドライン」をまとめているほか、関係工業会とも連携して、官民あげて取り組んでいる。