関東地区の流通は、政権交代に伴う期待ムードが先行しているが、実態は交代前とさほど大きく変化していない。
現状、市場を牽引しているのはPV(太陽光発電)である。PV電力の買い取り価格が今年4月以降も高値で決まったことでメガソーラーの立地が依然、活発に推移している。ソーラーパネルの生産が追い付かないという現象も起きている。PVへの設備投資資金を債権化して、一般投資家から集めようとする動きも見られるなど、PVを取り巻くビジネスはまだ続いている。
また、省エネなどエネルギーの効率利用を目指す動きも依然活発だ。工場の機械・装置ごとの電力消費の見える化と効率的稼働提案、ビルや店舗の空調、照明、エレベータのきめ細かな制御提案、さらには公共施設や家庭に至るまであらゆる場面において、エネルギー関連のソリューション提案が、インバーターやサーボモーター、PLCなどの各種コントローラー、表示器、センサーなどの需要につながっている。省エネはもちろん、創エネ、蓄エネなどは、国家的な取り組みに発展したことで、新たなターゲット市場を見出すことにつながっている。
対象ターゲットが工場以外に広がったことで、商社間の連携も広がりつつある。自社の扱う商材以外も必要になってくるためで、制御機器、電子部品だけでなく機械工具、電材なども必要になり、それを商社間で補完していこうとしている。
ただ関東地区でも、顧客の海外シフト傾向の影響は出ており、電気街の秋葉原でも店頭への来店者数は減少傾向にある。店頭販売の減少はネット販売の増加も要因であるが、市場が成熟化しつつあるのも現実だ。
日本の技術力を生かしたものづくりを復活させるためにも、新しい産業を興すことが重要で、とりわけ将来の顧客につながるベンチャー企業の育成は欠かせない。しかし現在の商社は与信管理を厳しく行っているところが多く、信用力の低いベンチャー企業への販売をためらうところも多い。直販主体に展開しているメーカーの中には、サンプルとしてこうしたベンチャーに必要な部品を提供してファンづくりを行い、購買力がついた頃に大きな売り上げにつなげようとする動きもある。
商社の役割が見直される中で、多少のリスクや先行投資もいとわないような経営方針をとらないと、ますます存在意義が問われかねない。また、各商社の社員教育への取り組み姿勢も差がある。商社の基本は人材であるが、その人材にお金をかけて教育しないで、メーカーの教育などで代用しているところが多い。顧客に商品を提案する社員である以上、自社で専門的なトレーニングを行うことで、仕入れ先、販売先からの絶対的な信頼を確保していく必要がある。
関東地区はいままで、市場が大きいことで比較的恵まれた営業活動を行ってきた。しかし、市場の空洞化と成熟化に加え、他地区からの関東への拠点設置や拠点強化の動きが急ピッチで進展している。今こそ販売先の拡大と仕入商品の拡充が必要だ。海外メーカーも品質、品ぞろえ、コストなどを特徴に日本市場開拓へ、商社へのアプローチを強めており、ビジネスチャンスでもある。
もう一度、製販一体となった市場振興への取り組みが求められている。