日本食品機械工業会(日食工、林孝司会長)のCEマーキング対応制御盤、UL規格対応制御盤に関心が高まっている。FOOMAJAPAN2013(国際食品工業展)に展示されたが、「難解な規格の理解には文字だけでなく実物を見せるのが効果的」(日食工事業部長大村宏之氏)との思惑通り、会期中、食品機械設計者や制御盤メーカーの技術者で賑わっていた。食品機械は出荷額の約95%が内需であるが、輸出振興に取り組み出しており、今後、国際規格適合の制御盤が増えるものと見られる。
日食工安全衛生企画委員会は、2010年度に手引書「国際規格対応
制御盤設計ガイドライン―IEC60204―1準拠―」を作成。11年度事業でこのガイドラインに基づいて制御盤のモデルを完成し、昨年開催のFOOMAJAPAN展で初公開した。今回は、UL規格対応の制御盤を製作したもので、海外市場で必要な欧米規格対応の二つの制御盤がそろったことになる。
CE対応制御盤に続きUL規格対応制御盤の製作を担当した岡村隆一さくらマシナリーコンサルティング代表は「機械的機能、性能、品質、インターロックなどはCEマーキング適合制御盤と同等とし、そのうえでUL規格に準拠した電気回路および機器配置の設計を変更した。適合規格はNFPA79(産業機械の電気規格)、UL508A(工業用制御盤)」。
製作のUL規格対応制御盤は、米国要求規格適合のラベル「FIELD
EVALUATED
PRODUCT」を添付しUL適合の証しとしている。
ULモデル制御盤の特徴は、筐体は高耐食性のSUS304を使用し、保護構造はIP66。冷却は内部循環冷却方式にしている。また、シールド配線や機器配置などEMC対策も施した。
このほかの特徴は(1)制御回路はクラスIIDC24V、PELV電源で構成(2)サーボモータ、インバータは汎用通信で省配線化(3)非常停止はカテゴリ2、非常停止押ボタンスイッチは押ボタン部と端子部の一体構造を採用(4)アース端子はDINレール取り付けアース専用端子台でスプリング式である(5)盤内照明はLED照明など。
UL規格対応制御盤製作に当たり、岡村氏は「CEマーキング対応制御盤はサーキットブレーカ、コンタクタ各1台でサーボモータ、インバータに接続すれば良かったが、UL規格は細かい規制があって、しかも1対1設計なのでサーキットブレーカ、コンタクタを回路毎に独立させる必要があり、機器の配置に苦心した」と、過去20年間経験したベテランが語る。
また、盤用機器選定にあたっても「同一メーカーでないと保護協調がとれないケースがあり、機器の選定には十分注意すべき。いろいろなメーカーを知り最適な機器選定が重要」という。岡村氏は、日食工の制御盤安全セミナーで講師を務めているが、要請があれば出かけて指導している。
輸出用食品機械に搭載の制御盤が法的制裁を受けるケースも出ている。電源機器で規格非適合品を使用した結果、現地で納期が遅れ1000万円の損害賠償を支払った例や、現地で配線し直しや機器交換などの例がある。それだけに、制御盤の国際規格適合には規格の理解や機器選定などが重要である。
大村事業部長は「実機として使えるモデル制御盤を製作した。日食工で常時展示しているので、大いに参考にして欲しい。制御盤メーカーのセミナーへの参加も歓迎する」と語る。