あるミュージアムを題材に書こうと決めたものの、まったく文字にならない。いっそのこと、今回は休載にしようとの思いが過った。理由は、今も判然としないが、深すぎてまとまらないのである。ただ言えることは、館内に「命が流れている」と、感じたことだけは確かである。
サンセイミュージアムのことである。公開前の取材で、浦野英幸サンセイテクノス社長に案内していただいた。「愛と童心の世界」のブロンズ像群に導かれ、力強さと情熱を放つ絵画を見る。そして「楽瓦庵」では父親で創業者の正一氏が蒐集した瓦や土器・石器で考古を考察し、「楽陶庵」で国宝級陶磁器に出会う。過去・現代・未来へつながる永遠性を表わした館内は、人間の凄さ、意志と情熱の波動に覆われている。
隣接のファームや果樹園には深緑の色が映える。農作業で心の、身体の汗を流した人たちが、真っ白な気持ちでミュージアムに足を運び感動する姿が目に浮かぶ。新・物流センターを見学できなかったが、最新環境設備のなかで出荷を待つ製品群を目にすれば、今までにない新鮮な気持ちでモノの価値を再確認し、モノづくりにより一層の誇りを持てる気がする。
「人間は永遠に続くのだから、次の世代へ継承するために、生かされ仕事をする。歴史で積み上げられた豊かさと幸福をさらに発展させて次の世代に伝えることが我々に課せられた使命。ミュージアムは私のテーマの集大成」と浦野社長は語る。「社員はもとより、お客様、仕入れ先、同業者、地域の方々などに来ていただき、精神的な豊かさを感じ心に残れば…」と願う。もう一度、訪れたい。