分岐点

ある居酒屋の一室。専業メーカー社員の二人は杯を重ねるうちに、話題が中国に移った。「中国ではロボットが売れているそうだ。人件費の高騰もさることながら、せっかく教育しても故郷に帰ってしまう。だから、ローカル企業向けに売れている。FA市場の本番はこれからだろう」。相方は「しかし、回収リスクが大きい」と応じる。

中国市場開拓に迷いを感じつつ、早速、マーケティング担当者に指示を出した。中国のFA市場はアジア最大の規模に成長しているが、同社は取引先を日系製造業に絞り、営業してきた。担当者は市場調査を進めるうちに、今年は中国ローカル企業を対象に販路を拡大するときとの確信を得た。その根拠を示しながら報告した。

中国では日系工作機械メーカーに勤めたあと、独立したローカル企業が急成長を遂げている。日本製を教科書にしてモノを造っているが、低価格を志向し低水準のPLCやセンサー、モータなど駆動・制御機器を採用してきた。しかし、市場の拡大に伴い、高精度・高品質が求められるようになり、日系工作機械で育った彼らは日本製機器を搭載する方向に変えつつある。

室温28℃の会議室。パチっと扇子を閉じた社長が笑顔の奥の鋭い眼差しで、ただひとつの議題を諮った。いつもなら、暑さを感じる室内だが、その日に限っては、温度がまったく気にならない。意見が飛び交う中で時間の経過も忘れてしまい、気付いたときはすでに昼過ぎであった。そして、結論は「中国ローカル企業に食い込むとき」。

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