製造業の海外生産シフト先としてタイへの関心が高まっている。自動車や電機関連の日系企業が工場を建設し、FA制御関連の需要拡大が見込めることに加え、チャイナリスクを避ける狙いもある。2011年に大きな被害をもたらした洪水への対策も取られ、政治的に安定していることから、今後さらに進出の加速が予想される。製造業はここ数年、人件費の安さや市場の将来性から中国への生産シフトが続いていたが、このところ中国も人件費が上昇し、沿岸部では求人も難しくなっていることから、以前ほどの勢いは見られない。それに対し、注目を集めているのがASEAN地域で、特にインフラが比較的整い、自動車、電機関連の日系企業が多く進出しているタイは、「ミニ日本」的な存在の市場として製造業がシフトし始めている。
これに呼応してFA制御機器メーカーもシフトを始めており、IDECは端子台やスイッチの生産を今年1月から開始している。また、オータックス(横浜市、富田周敬社長)も来年3月をめどにタイで端子台の生産を始める。
両社とも同製品を中国でも生産を行っているが、「チャイナプラス1」として、タイに生産拠点を設置し、人件費の上昇やアジア全体を見た営業戦略上のリスクを避けようとしている。端子台では以前から春日電機(東京都三鷹市、石本朝史社長)がタイで生産を行っている。
タイも、人件費だけを見ると中国と比べさほどメリットはないが、「ミニ日本」的な市場性と政治的な安定性があり、自動化生産などによって、人件費の増加も抑えられるという背景もある。
また、タイにはローカルのFA制御機器メーカーが少なく、品質レベルも低いことから、日本の制御機器の需要は旺盛で、デリバリーをしっかり管理すれば、安定した売り上げが見込める点も魅力となっている。
その一方、タイでは最適な生産システムを構築できるベテランのエンジニアが不足していると言われており、生産の立ち上げに時間がかかる。この面でも日本からの技術サポートが求められており、配電制御システムメーカーなどにもプラス効果が期待されている。