PLC(プログラマブル・コントローラ)の市場が徐々に回復基調を強めている。半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)や工作機械、自動車関連での需要に動きが見られ、PLCの市場にも波及が見込まれている。技術面も、小型・高機能化と処理スピードの高速化などに加え、パソコン環境との融和を図るC言語コントローラなども普及が進んでいる。今後も一層の使いやすさを求めた開発が続くものと思われる。日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、PLCの2012年度(12年4月~13年3月)の実績は約1040億円で、前年度比75・0%と大きく減少している。特に輸出は約340億円と前年度から200億円強落ち込み、リーマンショック時以下となっている。円高の影響、中国市場の停滞、欧州市場の冷え込みなど、PLC市場を取り巻く環境が厳しく推移したことが響いている。
PLCの出荷額はピーク時には約1350億円あったが、それに比べると約300億円減少していることになる。高機能化の一方で価格が下がっており、金額面で比例しづらいこともあるが、11年度は台数面でも、国内が前年度ほぼ横ばいの58万台に対し、輸出は同約40万台減の96万台まで減少した。市場拡大を牽引してきた輸出の不振がもろに影響したと言える。
13年度出荷1095億円予想
NECAでは、13年度の出荷見通しを前年度比108%の1095億円を見込んでいる。
国内では、工場の能力増強投資はなかなか増加を見込みづらい。むしろ既存設備のリニューアルによって、生産効率や品質の向上、より高精度生産の確立などを目的にした投資が中心となる。石油や化学などプラント設備も、設備集約とリニューアル化が取り組まれており、DCSなどからPLC計装に置き換えるチャンスの時期になっている。
このところ工作機械の生産も戻りつつあるが、スマートフォンやタブレットPCなどの生産が増加していることが主要因で、EV(電気自動車)の生産もプラス効果になっている。
海外生産シフトが強まる中で、エネルギーや環境に絡んだEV、電池、ソーラー関連、それに3品(食品、薬品、化粧品)関連が期待分野となる。また、ビルの空調や照明制御など、工場以外の用途でPLC市場を拡大することにもつながってきている。
やはり中国は期待市場
一方、海外は欧州を除くと、円安の進展もあり増加が見込めそうだ。北米は自動車産業の回復に加え、製造業の国内回帰も進んでおり、ものづくり投資が進展することが期待できる。新興国のブラジル、タイ、インドネシアなども自動車や電機関連での工場立地が急ピッチで増加しており、PLC市場にも大きな効果が見込めそうだ。昨年停滞した中国市場は、経済成長率の鈍化など今年も懸念材料はあるものの、地産地消の点から中国国内での需要はまだまだ大きく、期待の市場である。人件費の上昇から、生産形態もロボットや自動機を導入した方向に変化しつつあり、逆にPLC市場拡大へのチャンスを迎えている。
半導体や電子部品、液晶などの生産では、さらなる高速化、多品種化、情報化が要求され、これら装置制御を行うPLCや各種装置コントローラの役割は多様化している。装置・設備の制御コントローラでは、シーケンス命令を高速に実行するだけでなく、「モータ制御」「温度制御」「情報化に向けたネットワーク」といった装置・設備を取り巻くあらゆる処理で高機能・高精度化を要求されている。中でもプログラミング言語の多様化ニーズは高い。電気技術者にはC/アセンブラー、機械技術者にはラダー、生産技術者にはBASICといったように、得意な言語で記述できるような配慮が進んでいる。この場合、高速処理はラダー、浮動小数点/文字列演算はBASIC、HMIはAT互換といった用途に合わせた選択も可能になってくる。
このうち、C言語搭載のコントローラが注目されている。半導体や液晶製造分野などで良く使われているマイコンボードやパソコンベースのC言語環境を、PLCで実現できるのが大きな特徴だ。これに加え、パソコンやマイコン用部品の生産中止による管理コスト増大なども課題となっており、PLCで汎用のC言語プログラムを実行できるニーズが高まっている。
特に、公共関連分野では支持する声が多いようだ。IEC61131―3に基づいたストラクチャードテキストなどを使うことで、パソコンが適さない用途・現場でもPLCを使いこなすことが可能になる。
IEC61131―3は、産業用オートメーション分野の合理化につながるものとして、欧州を中心に普及が進んでおり、日本でもJIS規格化(JIS
B3501―3503)されている。
買い替え需要を積極開拓
PLCが市場に登場して30年以上が経過しているが、PLCの機能、コストは年々向上している。形状の小型化が進み、設置スペースの削減は当然であるが、以前は高級機種での搭載であった機能が最近は中級や簡易タイプの機種でも簡単に実現できるようになって来ていることから、PLCをリニューアルしたほうがプラス効果につながる。特に市場の拡大が見込みづらい国内市場では、置き換えによる買い替え需要を積極的に推進するPLCメーカーが目立つ。しかも、PLCだけでなく、工場設備全体の省エネ化につながるという提案でのリニューアル化には、比較的すんなり受け入れやすい状況下にある。
PLCのリニューアルを簡単に行えるツールを充実させているPLCメーカーも多く、これを機に周辺の制御機器もすべて自社の製品に統一してもらえるチャンスとして、専用のカタログを用意しているところもある。