操作スイッチの操作部と光源を一体化した照光式スイッチが、回復基調に入ってきた。国内では自動車、工作機械、新エネルギー関連を牽引役にして伸長を見せており、海外もアジアの新興国市場を中心に輸出が拡大を見せている。機器の小型化が進む中で、形状の小型・薄型化や光源の高輝度化が年々進んでおり、加えてELなど新しい光源の採用、環境負荷の軽減なども浸透しつつある。さらにデザイン性や、コストなどの特徴を前面に出して海外メーカーも活動を始めており、販売競争も激化している。各種操作用スイッチの中でも、操作と表示器を一体化した照光式スイッチは、スペースが有効利用できる点や視認性の良さなどから好評を得ており、大きなウエイトを占めている。主力市場の一つである工作機械は、前年同期との減少幅が縮まってきており、円安の進行もあり、先行きの回復が見込まれている。停滞していた半導体や液晶製造装置も受注見通しに明るさが見られ、2013年度としては大幅増加が見込まれている。 日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計を見ても、照光式スイッチを含む操作用スイッチの出荷は、12年度(12年4月~13年3月)は359億6900万円で、前期比3・1%の増加を示し、13年度第1四半期も92億4800万円となっている。この数字は前年同期比では3・0%減だが、13年第4四半期比では11・0%増と2桁の伸びとなっている。 照光式スイッチの主な用途は、開閉制御機器・開閉機器、工作機械、食品機械、運搬機械、半導体・液晶製造装置、アミューズメント機器、ロボット、計測機器などがある。中でも工作機械分野、半導体製造装置分野は大きな市場であるが、最近では新エネルギー関連での需要も上がってきている。原発事故に伴うエネルギー問題を受け、省エネ・創エネ・蓄エネ関連機器や、各分野におけるエネルギー・マネジメント・システムの普及などで、照光式スイッチも追い風を受けている。パワーコンディショナーや充電スタンド、スマートメータなど関連する機器が多く、電力の買い取り制度のスタートもあり、需要増に拍車をかけている。 交通インフラ関連にも採用 一方、鉄道やバスなど交通インフラ関連でも照光式スイッチを含め各種の操作用スイッチが数多く採用されている。車両のドアや運転席回り、車内の情報表示系統などの車両関連から、券売機、自動改札機、プラットフォームなど多岐にわたっている。鉄道車両用のスイッチは、高信頼性に加え、デザイン性や操作性などがポイントになっているが、照光式スイッチは、高い視認性により、一般乗客が簡単、確実に操作できる点から、着実な需要がある。 放送・映像・通信関連機器向けも大きな市場である。放送・映像機器は、頻繁に操作が行われることから操作性が重要視される。最適な操作性を実現するために、操作感触、視認性、耐久性、コンパクト化などがポイントと言われ、スイッチメーカーの中にはこの分野に技術を集約した開発を行っているところもあり、メーカーとしての技術力をアピールできる分野として注力している。 光源はLEDに置き換え 照光式スイッチの光源は、LEDが主流となっており、白熱球やネオン球はなくなりつつある。最近ではLCDや有機ELなども使用されており、高輝度化とともに視認性の向上が進んでいる。さらにLED本来の特徴である長寿命や低消費電力、低発熱、省メンテナンス性などにより、光源としての評価は高く、すべての光源がLEDに置き換えられつつある。 光源のLED化は、スイッチの薄型化にも貢献している。従来の白熱球光源と比べ小型なことから実装スペースが大幅に削減でき、薄型の照光式スイッチが数多く登場している。 ベゼル高さが1・8ミリという薄型・フラット構造の操作用スイッチなどは、操作パネル全体がシャープで引き締まったデザインを実現することに加え、凸凹の少ない操作パネルは、食品機械や半導体製造装置で求められる、ゴミやホコリの付着を防ぐ。操作スイッチ表面の突起が低いことで、誤操作などを防ぐ効果もある。また、スイッチの短胴化によりパネル奥行きも薄くなり、制御機器の小型・薄型化に繋がっている。 さらに、デザインだけでなく、スイッチ装着の安全対策や配線作業の省力化も図られている。操作用スイッチのフランジにステンレスを採用することで、金属質感を出し、より高級感を演出するスイッチもある。ステンレスなので紫外線などの耐候性も高い。 光源のLED化は、スイッチの表示色のカラフル化につながっているが、淡色のLEDでも表示プレートに加工を施すことで、表示色の切り替えができるスイッチもある。 有機ELでテレビ並み画面 照光式スイッチの光源として、LEDの次に注目されているのが有機ELである。有機ELを採用することで、表示部に画像やメッセージなどの表示や、1つの表示面で何種類もの表示が可能となり、限られたスペースで多様な情報が提供できるスイッチとして機能する。有機ELの特徴であるキメ細かな表示は、テレビのような表示画面が実現できる。さらに、通信機能を搭載することで、画面の変更が容易に行えるなど、新しいアプリケーションの開拓も期待できる。 有機ELだけでなく、液晶などを使用したインテリジェントスイッチは、今後、スイッチの可能性を拡大するものとして注目される。 操作用スイッチの配線に関しても新しい方式が出ている。配線時のはんだ作業をなくし、スイッチのユニット部分の端子ホルダー穴に電線を挿入し、平行プライヤーで端子を圧接するだけで結線が可能という方式で、はんだやはんだ付けのための電気も不要で被覆廃棄物も発生しないなど、環境負荷低減と配線作業の短縮化を図る方式として注目されている。 NECAが新規需要調査 照光式スイッチをはじめとした操作用スイッチの市場拡大に向けた取り組みが継続的に行われているが、NECAのスイッチ業務委員会では、スイッチの新規需要調査を継続して行っており、12年度は直流給電市場について調べた。EV(電気自動車)急速充電システム、ソーラー発電システムでのスイッチ市場の需要動向をまとめたもの。同委員会では操作用スイッチのグローバル市場の把握についても取り組んでいる。 為替がこのところ円安に振れていることで輸出環境は好転している。しかし、依然として海外、特にアジアの新興国や南米、東欧などの市場での拡大が見込まれており、「地産地消」の観点と、海外メーカーとの販売競争の点から、海外での生産が続きそうだ。
照光式スイッチ回復基調 自動車、工作機械、新エネ関連が牽引 アジア中心に輸出も拡大 小型・薄型化、光源の高輝度化進む 海外メーカーとの販売競争も激化
- 2013年8月7日
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