メンバー十数名が集まり、勝手に話題を投げあう。グループの一人が、別の会話に口をはさむことも度々である。飛び交う話題を聞き取り、関心のある話には指向性の高いアンテナがとっさに反応し、整理して参加する。よくも聞き分けられるものだと感心するが、本人は至極自然の様子である。
「雑音」を取捨選別する人間の能力に、工学が進歩してもまだ追い付かないようだ。気象庁の緊急地震速報の誤報は、海底地震計のノイズを地震の揺れとして取り込んで計算したことによる。実際は、マグニチュード2・3の無感地震であったが、ノイズにより震度6弱と予測した。そのとき、甲子園の高校野球大会はそのまま行われたというオチまでついた。
ノイズが電子機器を誤動作させたり、破壊させたりする例は枚挙にいとまがない。オートマチック車の急停止・急発進、心臓ペースメーカーの動作不全といった身近なものや、工場ではロボットの暴走、プラントの停止、装置の誤動作、センサーの誤動作が発生している。タクシーの料金メーターの誤表示、電子錠の開錠による盗難発生といった笑い話もある。
ノイズは伝導、放射、電磁誘導、静電誘導と種類が多く存在し、輻輳する。ノイズは出さない、入れないが電子機器・装置を守る最良策であるが、現実は、電気を使う以上は無理である。この「雑音」対策として、侵入防止品だけでなく、ノイズ測定装置やノイズ環境記録・再現装置が売れているのもうなずける。雑音低減策は装置や機械の高付加機能として、今後も評価され続ける。