本来デジタルマニュファクチャリングとは、各種デジタルデータを統合・管理し、開発・解析・生産構築・製造・品質・物流などモノ作りにおけるあらゆるシーンで活用しプロセスの効率化・短縮を実現することと定義される。
第2回は、その中でも製品開発領域における具体的ニーズを紹介する。
3DCADの活用とPLM統合デー
タベース構築への展開
第1回にも述べたが、開発設計において3DCADを導入している会社は8割前後にのぼる。3Dで設計をする上での設計のしやすさは言わずもがなであるが、昨今3DCADを採用する上で新たなニーズも耳にする。
例えば、「パラメトリックは拘束のない柔軟な設計変更ができる」「3Dデータの2D図面化」「データのJT化」「海外企業とのデータ互換」「製造部門への生産準備や製造へのデータ活用」などが挙げられ、これらの機能を兼ね備えた3DCADが求められている。さらにPLM統合データベースを導入する企業が増えてきている。生産工程別に製品データ・生産情報・設備や治具データが統合されており、これらのデータベースとの親和性がなければ製造プロセスも含めた効率化・短縮効果が見込めない。
部品データの効率的流用(部品データ
管理)
多数の部品で構成される設備機器や産業機械メーカ等において、3DCADデータの簡単な再利用への動きが活発化してきている。従来は過去に設計した部品データの検索に時間がかかったり、見つかったとしてもCADの機能が乏しく再利用できなかったりと、結局は類似部品をCADで再設計するなどの対応をしていた企業が多かった。
昨今、形状検索技術の向上や、3DCADのシンクロナステクノロジーに代表される機能により、部品データの再利用技術が大幅に向上していることから本格的に部品データ管理に取り組む企業が増えている。
部品データの再利用にはデータ管理環境が必要だが、自社購買部門とも連携することで、調達業務の効率化など、利用効果の幅が広がっていることもニーズ拡大の一因といえる。
設計者自身によるCAEの活用
“CAEは解析専任者のツール"という認識を持つ人はまだまだ多い。しかし昨今その認識は大きく変わり始めている。3DCADにアドオンされたCAEの機能向上により、設計者が慣れた操作で解析ができる環境が提供されている。また、設計者向けの解析業務用フレームワーク(解析自動化システム)の普及も後押ししている。解析自動化システムにより、設計者による解析実行がある程度自動化され、過去の解析結果等を容易に検索、利用できる。業界大手の電通国際情報サービス(ISID)社によると、「設計者自身によるCAEの活用は、以前は単に設計者の負担を増やしたり、解析専任者を減らすと言った意見も多かった。しかし現在ではものづくり全体のプロセス効率化の視点で設計者CAEを考える企業も多い」という。同社では「構想段階など早い段階で必要なパラメータ情報を取得し後行程での品質問題を最小化するために必要不可欠な要素」と捉えている。
3DデータのJT化
ISO認定(ISO14306)されて以来、日本においてもJT活用の動きが活発化している。元々欧米でデファクトスタンダードの位置を占めていたJTファイル。グローバル化により、海外に進出している日本企業も、部品/部材の現地調達など海外現地企業とのやり取りなどに同フォーマットを利用するケースが増えている。CADデータとほぼ同じ量の情報を持つJTファイルは、軽量で利用できるため、社内外でのコミュニケーションフォーマットとして有効である。
また、ISO認定により、3Dデータの長期保管フォーマットとしても検討が始まる。現在、単なるViewerとしてではなく、設計~生産準備~製造~販売~保守・保全まで、より幅広い領域で3Dデータを活用することのできるJTフォーマットに完全準拠のソフトウェアも安価に発売されている。(つづく)
(筆者=株式会社FAプロダクツ
貴田義和)