三相誘導電動機のトップランナー方式が2015年度スタートする。日本は欧米に比べ高効率タイプの普及が遅れていたが、トップランナー基準の適用により、高効率タイプの普及が一気に加速される。
国内で使用されている三相誘導電動機は、約1億台。そのうち、ポンプ向けが38%を占め、次いで圧縮機23%、送風機13%、動力伝達装置9%、金属工作機械7%、農業用機械器具4%、運搬機械・産業用ロボット3%、その他3%であり、上位3品目で全体の70%を占める。
国内の三相誘導電動機の消費電力量は、産業部門の75%に達しており、省エネ化を妨げる要因になっている。資源エネルギー庁の試算では、全てがIECの統一的な効率クラスIE2(高効率)に置き換わると年間87億kWh、IE3(プレミアム効率)では年間155億kWhの消費電力量の削減が可能といい、極めて大きな省エネ効果が期待できる。
そのため、トップランナー方式の適用が喫緊の課題になっていた。
経済産業省の省エネルギー基準部会三相誘導電動機判断基準小委員会は、三相誘導電動機のトップランナー化に向けて中間報告をまとめ、今年中に省エネ法の改定が告示される予定である。
トップランナー適用の目標年度は2015年度で、判断基準のエネルギー消費効率に満たない製品は出荷できなくなる。
これまで高効率タイプの普及が遅れた要因には、機器単価が高くなる、現在稼働している寿命の長いモータを買い替えるインセンティブが働かない、故障しても機器の互換性や緊急性を優先し仕様の異なる高効率タイプを注文することは稀などが挙げられている。
こうした問題も法規制により解決し、高効率化が加速的に普及するものと予想される。
日本は、高効率化が海外と比べ遅れているが、追い付き、海外市場でも競争力を維持できるようになる。米国では10年12月19日にIE3プレミアム効率の適用義務化が始まり、欧州でも15年にIE3またはIE2+インバータの適用義務化を決めている。こうした政策により、米国ではIE2とIE3の合計が三相誘導電動機の年間生産・出荷台数の70%、欧州でもIE2が12%と、日本の1%と比べ大幅に高効率化が進んでいる。
こうした世界の動向に、トップランナー方式適用で一気に追い付くことが期待されている。
なお、対象範囲は、単一速度三相かご形誘導電動機で出力0・75~375kW、2極・4極・6極、電圧1000V以下。
適用除外機種は(1)特殊絶縁(2)デルタスター始動方式(3)舶用モータ(4)液中モータ(5)防爆形モータ(6)ハイスリップモータ(7)ゲートモータ(8)キャンドモータ(9)極低温環境下で使用するもの。