夏場は冷蔵庫内の食品をできるだけ少なくしようと、残っているいろいろな食材を使って料理をする。ごっちゃ混ぜであるが、結構美味いと思うときは、家族に味見を無理強いする。ところが、見た目で判断し、味にうるさいとか言って、まず箸を付けない。食わず嫌いなのである。
知人によると、FA業界でも同じような経験があるという。どんなに優れた製品でも、初対面の顧客はまず「どこで使っているか」と聞くそうである。ましてや新技術や新開発といった「新」が付くと、製品そのものの良さは理解したうえで、採用に二の足を踏む。慎重というよりも踏み出すリスクの回避であると、知人は嘆く。
日本でベンチャー企業が育たないのは、エンジェル投資家が少ないことがあるかもしれないが、それよりも見当違いの「実績主義」が壁になっている。せっかくの新技術や高度な知識が活かされないのだから、大学発ベンチャー企業数が減少傾向にあるのもうなずける。米国やドイツだけでなく、中国と比べても大きく差を付けられている。
ここ数年は中小製造業による研究開発の助成金申請が増えている。どちらかと言えば、最終ユーザーを抜きにした開発が多い。研究開発段階から対象顧客を加えて実用化をめざす体制が作れないものであろうか。顧客はチームに参加し助言をするのだから、自社よりも先に他社の採用を求めるわけがない。その媒介役は、多くの業種を顧客に持つ商社がうってつけである。商社の営業社員は、新製品を育て、ベンチャー企業の成長を見届ける楽しみ方ができる。それこそ、製販需三位一体である。