豊かな感性を次の世代へ

「彫刻」「絵画」「考古」と紹介した「サンセイミュージアム」の最後の展示室は「陶芸」である。

前回紹介した考古展示室は、2002年に同社本社屋に設置された「楽瓦庵」が原型であったが、陶芸展示室は、05年に同じく本社屋に設置された「楽陶庵」が原型となっている。

陶芸展示室には、重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定された名匠達の陶磁器を中心に作品が並んでいる。考古展示室と同じように、伝統と革新により受け継がれてきた、人間の技術への尊敬の念と称賛を表すものとなっている。

人間国宝をはじめ40人の作品が展示されており、作品数は44点に上る。壷や花瓶、皿、水差し、碗など、様々な種類の陶磁器が展示されており、作品一つ一つに個性・主張が感じられ、ずっと眺めていても飽きることがない。

展示室の入り口には、自身の作品も展示されている人間国宝の陶芸家、原清氏からミュージアム開館に際しての祝辞も飾られている。全国規模でも、人間国宝の作品を一堂に展示している美術館は珍しいという。

浦野英幸社長は「こうした名匠達の作品に接するたび、伝統と革新により作り出された一点しかない作品に、感動の念を禁じ得ません。当社ではテーマとして『顧客感動』を掲げていますが、こうした作品に触れて感動することが、人間力や感性の向上など、我々が顧客に対し、より良い製品や技術、サービスを提供し、顧客に感動していただくということにつながるのではないかと考えます」と語る。

さらに、同社は技術商社として「安全・安心」をテーマに事業活動を行っているが、陶芸展示室には防災対策として、作品を置く台に免震装置を組み込むなど安全対策も施されている。

ミュージアムの1階は、このように「彫刻」「絵画」「考古」「陶芸」の4つのジャンルで構成されているが、2階には、彫刻家玉野勢三氏の作品の原型や、駅や役所などパブリックスペースに設置されたもの、デッサンなどが展示されている。

また、2階フロアには、同社創業者である浦野正一氏のゆかりの品を展示した記念室もある。創業者が、学生時代や戦時中に使用していた物や、郷土研究会所属の際の出版物などが並べられている。さらに、創業時の売り上げ台帳もあり、同社にとっても意義深い部屋である。

「我々は、製品と技術の供給を通じて、大量生産、高品質、高効率を支える企業ですが、豊かさと幸福を次の世代に伝える責任があると思います。大量生産に寄与する企業であるからこそ、一点しかないものを創る技術に対し、敬意を払わなければならないでしょう。ジャンルの異なる作品を展示していますが、根底に共通するこうした当社の想いを汲み取っていただくとともに、ひとときの安らぎを感じていただければ幸いです」と、浦野社長はミュージアムの意義を語った。
(おわり)

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