ソフトウエア会社がハードウエア事業に参入何故か?

◆Apple(iPod、iPhone)に続け

Appleは1976年にAppleⅠ(RAM=4KB/48Kまで拡張化、CPU=1MHz/インタプリタ/BASICライク)をもって倉庫でスタートした。AppleⅠを大幅に機能アップし、プラスチックケースに入れたパソコン:AppleⅡは、1984年の上場までに約200万台売れ、社員も2人から3400人になった。しかしIBMの参入により、2001年には倒産寸前になった。
「Appleはハードウエアを売っているが、ソフトウエア会社である(スティーブ・ジョブ氏)」の精神で、市場を先取りした“モバイル&超小型の製品&編集ソフトウエアiTunes”構想でモバイル音楽プレイヤーiPodを生み、iPhoneにつながっている。2011年8月10日には株時価総額(3363億ドル)世界一になった。

このソフトウエア会社であるという精神で、売り上げより利益、付加価値の高い市場をターゲットにして高利益率ビジネスに徹してきた。携帯電話市場ではシェア5%で利益は60%以上と突出している。「ハードウエアよりソフトウエアの粗利が大きいという業界神話」が崩れたといえる。

しかし2013年の携帯電話&スマホ市場ではSamsung(Android)の約2分の1になっている。Apple社の次の一手は?
◆ハードウエアに再興/参入している企業例

シリコンバレーにある企業では、マイクロソフト(シリコンバレーに研究所)とグーグルのタブレット開発・販売、オラクルのサン・マイクロシステムズ(ハードウエア企業)買収などがある。これらは単にApple社に続いたわけではなく、製造工場を持たないで、必要に応じて製造能力を買う、という戦略も踏襲している。またハードウエア販売市場を持たないソフトウエア会社は、オンライン直販やソーシャル・メディアでの販促の普及によって市場を確保でき、小売店を経由する利益圧縮も抑えられる。

シリコンバレーの会社で、スマートフォンやパソコンのドキュメントソフトウエアおよびインタネットソフトウエアの大手Evernote社(日本法人エバーノート
ジャパン、東京、2010年6月設立)のリービンCEOは、2013年4月18日に日本で、「Evernoteが製造を手がけることはないが、新しくて魔法のようなデバイスを作ることに注力したい」とインタビューで答えている。

日本のソフトウエア会社(大手ハードウエア企業の系列を除く)で、ハードウエアに参入している企業は、メンターグラフィックス・ジャパン(東京、米国)や日本ネスト(東京、インド・NeSTグループ)などの外資系の日本法人、および富士ソフト(横浜、従業員5700人)、TOUA(東京、同約300人)などで、中小のソフトウエア会社は少ない。中小のソフトウエア企業の約80%は研究・開発の余裕がないとの統計もある。
◆組み込みソフトウエア会社のアプリックスがM2M通信モジュール(ハードウエア)に参入

EE
Times
Japan(2013年1月16日)の取材で、アプリックス親会社であるアプリックスIPホールディングスの代表取締役郡山龍氏が次のように語っている。

「Googleが高度のプラットフォームをオープンソースで提供を始め、当社の携帯電話機向け組み込みソフトウエアのライセンスビジネスが成り立たなくなり、当社は将来性のあるM2M通信モジュールの設計・製造(ファブレス)に逃げた。現在の市場価格500円/@を、2万ロットで200円/@という信じられない低価格で提供した。まもなく100円まで持っていく。何故このような低価格が出来るかというと、極論すれば当社の“ソフトウエアで生きていく”というコンセプトを変えずに、『ハードウエアを販売するふりをして、実はソフトウエアを売る』のが狙いだからである。またM2Mを選んだことについては、例えば家庭のあらゆる機器がネット接続機能される場合はピアツーピアではなく、超安価なネットワークM2Mになると確信し、すでにソフトウエアソリューションを確立している。このソリューションが将来十分なビジネスになると確信し、先行投資をした。もちろんモジュールの設計~製造(ファブレス)~販売までの工程を自動化し、コストを抑える手法はソフト屋ならではの発想であった」。(つづく)
(筆者=FAラボ代表
松本重治氏)

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