FA制御業界のほとんどの経営者は「まだ、景気回復の実感が湧かない」という。販売最前線の営業からの情報も景気の良い話を聞かないそうである。それは、製造業の国内設備投資の内容に変化が出ていることも一因と思われる。生産能力を高める投資は、話題に明るさを伴うが、現在は維持・補修に向けられているため、景気浮揚感に乏しい。
日本政策投資銀行が6月に調査したレポートによると、今年度の大手製造業の国内設備投資は、前年度比10・6%増であるが、最大の投資動機は設備の維持・補修である。2008年度の調査では、能力増強が40・4%を占めていたのに対し、維持・補修は16・5%であった。が、今年度は維持・補修が25・6%に達し、23・6%の能力増強を上回った。
地域別の今年度設備投資は、東北、首都圏、東海、四国など7地域が増加し、北海道、北関東甲信、中国で減少する。とくに、首都圏19・4%増、東海17・0%増、四国19・2%増と3地域の伸びが大きい。輸送用機械など好調業種の影響が出ている。ただ、北海道以外では、総じて上昇傾向にあるのも事実である。
ところで、製造業の設備投資は、維持・補修に合理化・省力化向けを加えると、投資額の約4割に達する。そのため、FA制御機器業界は、生産能力増強の訴求よりも、維持・補修に関連するメリットを強調する営業を展開しつつある。既存の市場は成長から成熟へ移り、他方、非製造業で新たな成長市場が生まれてきている。どちらを狙うかで製品PRの内容も変わる。