本来デジタルマニュファクチャリングとは、各種デジタルデータを統合・管理し、開発・解析・生産構築・製造・品質・物流などモノ作りにおけるあらゆるシーンで活用しプロセスの効率化・短縮を実現することと定義される。
第2回では、製品開発設計における3DCADデータの効率的流用・設計者におけるCAEの活用等をご紹介した。今回は、開発設計領域にて作成したその3Dデータを製造プロセス領域でどう活用されるのか、また製造プロセスにおける生産シミュレーションソフトウエア・3Dレーザースキャナの活用について紹介する。
製造プロセスにおいて、従来2D図面での作業手順書・工程フロー・製造準備のための資料作成・あるいは治具の製造などは実際に組み立てながら写真を撮り、それを活用するというスタイルで作成するのが通常である。しかし3Dデータを活用し作成することで、実際にモノ作りを始める前に手順を正確に把握することが出来るようになった。これで組み立て等にかかわる時間を試作機や量産初号機で40%近く圧縮できる実例もある。
しかし導入コスト面や大容量データの取り扱いに製造現場での3Dデータ活用は障害も多かった。そこで昨今新たな動きとして、欧米ではスタンダードとなっているJTファイル形式を活用した「R-3D」(電通国際情報サービス)等の低価格・低容量ソフトウエアを活用することによって実現が可能となっている。
従来、生産工程計画で生産能力・作業人数・設備数・バッファ数等の新ライン設計時の成立性の検証であったり、リードタイムを守るための最適な投入順序や運搬計画・人員の配置など日々の生産計画における最適化算出などはベテラン社員のノウハウやExcelにおける複雑な計算に依存しているのが現状である。
そこで大手自動車メーカーを中心に活用が拡大しているのが「プラントシミュレーション」(シーメンスインダストリーソフトウェア)である。
特に多品種・小ロットの生産現場において、ベテランによる「勘・コツ・度胸」に頼ることなく、各設備における生産シミュレーションの前提条件を設定入力するだけで、生産計画のライン成立性の検証や、日々の最適化数値や順序の自動算出などを瞬時に実現できるソフトウエアである。特にヨーロッパを中心とした大手製造メーカーでは標準的に活用されているソフトウエアであり、今後さらに日本における活用は拡大していくものと思われる。
新しい3Dデータ活用例を紹介する。工場ラインの新設や変更、既存建築物の増改築時図面が存在しないケースが多く、図面の引き直しが発生し多大な工数を要していた。しかし昨今、中長距離レーザースキャナの低価格化や精度向上が進み、大規模な構造物が3次元点群データとして簡単に計測できるようになり、既存の設備を簡単に3次元データ化することが出来るようになってきている。これによって新しい設備の導入検証やレイアウト変更、配管配置などの検討が早期に行えるほかプレゼンテーション効果も発揮できる。(つづく)
(筆者=株式会社FAプロダクツ
貴田義和)