照明器具の主流になりつつあるLED照明は、高輝度で信頼性が高く長寿命という特徴により、一般家庭から工場などの産業用途まで幅広い分野で採用されている。産業分野では、調光制御が可能なことから、工場やオフィスの照明用として採用が拡大している。さらにメンテナンスフリーで小型・薄型化を図ったことで、装置や機械の内部用照明として需要が拡大している。FA分野以外でも、植物育成分野や医療施設などの分野で採用が広がっている。今後は、高演色性やさらなる発光効率のアップ、低価格化などが進むものと予想され、デジタル制御が可能なことから、快適性や安全性など付加価値の向上も期待できる。
LED照明は、発光ダイオードを使用した照明器具。高輝度、長寿命・高信頼性、低消費電力・低発熱性、耐衝撃性、小型・点光源、高速応答性、環境に優しいなど数々の特徴を持つことから、現在では家庭用から産業用まで幅広い分野で使用されている。
国内は年率2倍近い成長
LED照明器具の国内市場は、2011年、12年とも2倍近い拡大を続けている。富士経済の調査によると、11年(1~12月)が2212億円(前年比155・7%増)、12年は3738億円(同69・0%増)となっている。11年は金額、数量とも全照明器具に占める割合は20%台だったが、12年は40%台に拡大、13年もLED照明の比率は高まっており、20年には金額ベースで60%、数量ベースで70%に達すると予測している。世界市場も急拡大しており、グローバルでの市場規模は、11年で約273億ドル(約2・2兆円)とされている。
LEDは、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子を用い、素子の中の電子エネルギーを、直接光エネルギーに変換することで発光する。発光原理はエレクトロルミネセンス(EL)効果を利用しており、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)も分類上はLEDに含まれる。
LED照明の輝度については、産業用の製品では高出力デバイスと光学技術、マイクロアロイレンズの採用などにより、輝度で2100ルクス、光束で1万5700ルーメンという高輝度を実現している。
LEDの想定寿命は、照度70%期において6万時間とされており、非常に寿命が長い。これにより、一度設置すれば電球交換など保守の手間が省け、部品や器具の購入コストが削減できる。こうした高輝度と長寿命という特徴により採用が増加している。低消費電力・低発熱性では、発光効率が高いので、少ない電力で従来の白熱照明と同じ明るさを出すことができる。熱となって失われる電力も少なく、低発熱の照明器具である。
工場用の天井照明では、従来の水銀灯に比べ、使用電力で約60%削減でき、高い省エネルギー化が図られ、調光機能を取り付けたタイプでは、さらなる省エネが可能である。
日本電球工業会によると、LED照明の使用電力は、蛍光灯の約2分の1、白熱電球の約8分の1としており、CO2削減にもつながっている。
構造的に、真空やフィラメントを必要としないため、従来の照明より衝撃に強く、ほぼ点光源であり発光部が小さいことから、設置空間が小さくでき、デザインも工夫しやすい。高速応答性では、熱慣性がほとんどないLED照明は、電源の入り切りに応じ高速で点灯・消灯する。対環境面でも、有害な水銀を使用しておらず、赤外線を出さないことで熱を外に伝えないことや、紫外線を出さないため虫が近寄ってこないなどの利点を持つ。ネックだった価格は、ここ数年の急速な普及で量産化が進み、リーズナブルになってきており、産業用LED照明でも低価格化が進んでいる。
異分野からの参入が急増
LED照明が登場する以前は、照明の製品技術や市場に大きな変化がない状態で、数社のメーカーが分野ごとに棲み分けする安定市場であった。しかしLED照明の登場で市場構造は激変し、異分野からの参入が急増している。LEDは半導体であることから、半導体メーカーや、これまで照明に関係のなかったところも、LEDをアッセンブリするなどし、生産・販売を行っている。
工場などの用途では、LED照明を導入することで調光などの制御が可能となるほか、薄型化を図ることで装置や機械の内部用の照明として機能できるようになり、需要が拡大につながっている。高輝度LEDデバイスとレンズの採用、さらにリフレクタによる光学設計と、高効率な電源設計で、より高輝度で省エネルギー、長寿命、省スペース、メンテナンスフリーが特徴の各種産業用LED照明を展開している。
用途も、事務所や工場、店舗用の天井照明などを中心に、マイナス40℃の環境でも即時フル点灯が可能なタイプでは、低温倉庫などの照明として使用されている。さらに水や油、切削くずが飛び交う工作機械や食品加工機械・設備など、厳しい環境下の機械内部照明や、設備用照明などの分野でも採用が増えている。
厳しい環境下での使用では、保護構造IP66G、IP67G、IP69Kという高い特性を有しており、防水・防塵・耐油・高耐食性を備えた高機能なLED照明となっている。また、小型・薄型で軽量ということから、携帯用として、制御盤や配電盤用の中を照らす照明としても利用されている。照明器具の裏側に磁石を取り付け、作業員が見たい場所に磁石で貼り付けることで手が自由になり、作業員の作業性アップにつながるといった利点も生まれている。
最近は、各種産業機械の機内LED照明ユニットとして、本体長さ100ミリのミニサイズから、365ミリのロングサイズまでラインアップされており、従来品では設置が難しかった超小型機械から大型機械への対応や、高さを25ミリに抑えた薄型設計で機械内に凹凸の少ない広々とした空間を実現している。照射角度も、機内が見やすいように約120度の広角配光や、フラットで自然な光を実現している。
豊富な形状・色のLED照明をラインアップした画像処理用LED照明の分野は、LED照明のほかに照明用電源やセンシング照明、フィードバック電源、照明モニタリングセンサ、アクセサリ類まで幅広くラインアップし、ユーザーの要望に応えている。
植物育成分野が急成長
産業用以外では、植物工場など室内での植物育成分野などが急成長している。特に植物の育成にはLEDの単波長特性が適しているとされており、最近では、産官学の連携事業として大学などで専門的な植物工場ラボが建設され、植物工場から品質の高い野菜や果物を一般市場に大量に供給できる研究や開発が進んでおり、今後の成果が期待される。
植物工場以外でも、消費燃料が軽減できるイカ漁などの集魚灯分野や、紫外線や赤外線による劣化を避けたい美術品や伝統工芸品などの展示用途のほか、LED照明はノイズを放射しないので医療施設や半導体工場向け、歯科治療用光硬化樹脂の照射光源、商業施設などで映像表示を兼ねた映像ライティングなど、様々な分野で需要が拡大している。
モバイル機器の表現力アップ
今後のLED照明の技術開発は、小型でさらなる表現力が求められるモバイル機器やアミューズメント機器向けに、高輝度とともに、表現力のアップに欠かせない高混色性を実現した小型リフレクタ付き3色発光チップLEDなどが開発されている。このチップLEDの開発により、超精細でありながら、高輝度でのLEDマトリクス生成を可能としており、モバイル機器やアミューズメント機器などでの表現力が大幅にアップされるものとして期待されている。
LED照明の今後の課題では、高演色性や、さらなる発光効率・節電効果のアップ、長寿命化、低価格化などが挙げられる。さらにデジタル制御が可能なことから、快適性や安全性の向上なども図れるだろう。LED照明は、既存照明からの置き換えとともに、新たなアプリケーションが開拓できるデジタル機器として、明るい市場が見込める。