FA・制御機器の流通業界は、今年春先の状況に比べるとかなり改善してきており、一部からは明るい声が聞かれるようになってきた。自動車関連、スマートフォン、ソーラー関連などが市場を盛り上げる牽引役になっている。2020年東京オリンピックの誘致決定で、先行きへの波及効果を期待する声も強く、一時の閉塞感から比べるとムード面でも明るさが感じられる。しかし、取り巻く環境がこれで大きく変わったとは言えず、依然厳しい側面も多い。国内市場の成熟化、ヒット製品の不足、海外市場へのアテンド、事業継承問題、ネット販売への対応など、クリアしていかなくてはならない課題は残っている。課題解決への挑戦はこれからも必要だ。
FA・制御機器の流通は、国内市場が成熟化と空洞化が進展する中で模索を続けている。国内では、エネルギー関連が牽引役になって市場の落ち込みを支えている。PV(太陽光発電)や風力発電などの再生可能エネルギーの普及に合わせ、パワーコンディショナーの旺盛な需要が継続している。パワーコンディショナーは日本メーカーが先行しており、生産は国内、海外の両方で行われているものの、日本メーカーの売り上げ拡大に大きく貢献している。パワーコンディショナー周辺への波及として、充電池や充電スタンドなどに及んでいる。
LEDの普及で波及効果
省エネルギーの点から普及が進んでいる、LED照明の波及効果も目立つ。LED照明は、家庭はもちろん、店舗や工場、公共施設などの産業用・業務用での需要が大きく拡大している。LED照明では、LED球そのものの市場も大きいが、周辺のコネクタ、コンデンサーといった部品需要も大きく、部品メーカーや商社の売り上げ増につながっている。
半導体製造装置に明るさ
今年5月頃まで低迷していた半導体製造装置も、スマートフォンやタブレットPC、自動車電装品向けなどの好調を受けて、国内外の半導体メーカーが投資を増やし始めたことで、ようやく動きだし、先行きへの期待が高まっている。日本の半導体メーカーは再編続きで元気がないものの、韓国、台湾など海外メーカーは投資を活発化させていることで、外需中心に市場が回復してきている。
東京五輪関連投資に期待
東京オリンピックの開催が決定したことで、国内のムードが明るい方向に変わりつつあり、産業の空洞化が懸念される中で、オリンピック関連での投資が出てくることを期待している。社会設備全体が老朽化する中で、設備のリニューアル需要を期待する声が強かったが、この動きがさらに加速し、道路・橋・鉄道・下水道、オリンピック関連施設建設などリニューアルを含めた投資となって、最新の制御機器、省エネ関連機器の需要増への波及が見込まれる。
さらに、高齢化社会を迎え、介護・福祉関連市場、防犯などセキュリティ市場も新たな期待分野として浮上している。
ベンチャー企業の育成推進
政府は10月15日に「産業競争力強化法案」を国会に提出した。日本の産業を元気づける内容として、ベンチャー投資の促進や、設備投資減税、リース手法を用いた先端設備投資支援など、産業の新陳代謝を促し、世界に対抗できる企業競争力をつけようとしている。
商社でも、将来の金の卵を育成すべく、ベンチャー企業との取引を積極的に進めようとしているが、一方で与信管理の点から二の足を踏むケースも多いだけに、国内産業育成の上からも効果が期待される。
一方、顧客の海外シフトや、市場のグローバル化に対応して、海外市場開拓に重点を置く商社の増加が依然続いている。海外では、日本製の制御機器、電子部品へのニーズがまだまだ強く、しかもエンジニアリング力のレベルも低いことから、商社のサポートを求めるニーズは多い。今までは中国市場が中心であったが、この頃はタイ、ベトナム、マレーシアなど東南アジア全域に広がってきている。
新用途を探す努力が必要
FA市場にPLC(プログラマブルコントローラ)やPD(プログラマブル表示器)が登場して約30年が経つが、これに続くヒット商品が育っていない。しかもこの製品が万能な機能を持っていることで、商社の営業力低下につながっていると言う声も聞かれる。単なる顧客のご用聞きで終わっているために、新しい市場が見えなくなっている、あるいは新しい市場を探す努力を怠っているのでは、と言うのだ。
既成概念を捨てながら、新しい市場探しの営業にもう一度戻ってみることも、今後の商社には必要なことかもしれない。
ネットでの通販が影響力を増しつつある中でも、顧客に密着して新たなニーズを掘り起こすことで、商社の存在をアピールしていくことが今後、さらに重要になってくる。
関東地区の流通は、今年6月を境にして業績の反転している所が増えてきており、総じてムードは良くなっている。パワーコンディショナー関連が先行し、LED、スマートフォン、タブレットPC向けなどの電子部品関連が牽引、これにつられて半導体製造装置など向けにサーボモーターやPLC、空圧機器などのFA機器需要を拡大させている。2020年東京オリンピックの誘致決定も沈滞ムードを吹き飛ばす上で、大きな効果を生み出しているようだ。
国内で今後は増産のための投資は見込めないという認識が定着しつつある中で、それを補う市場の開拓が大きな使命となっている。現在活況を呈しているPV(太陽光発電)市場では、パワーコンディショナー本体だけでなく、コネクターやトランス、避雷対策機器、ブレーカー・マグネットなどの周辺機器需要の拡大にもつながる。LED照明も同様に、LED照明本体より、周辺機器の需要が多いこともある。DC(直流)機器はAC(交流)機器とは別な構造的な難しさがあり、スイッチや端子台などで新しい製品が開発され、市場を支えている。
生産能力増強の投資が減っても、生産コスト削減、品質向上の投資は止むことはない。省エネ対策から取り組みが強化されている、工場や機械設備で使用されるエネルギーも、見える化や稼働の効率化により、生産コストのダウンにつながる。既存の設備を有効に稼働させるための投資、既存の設備の中で品質を高める投資が継続して見込める。機械を増やす投資から、今ある機械をうまく連携して動かすことで効率を上げる。オフィスの情報化に対し、こうした投資は「工場の情報化」として、今後ますます増えてくるのは確実だ。
関東地区の商社では、扱い製品に海外製品を加えるところが増えて来ている。台湾メーカーが多いが、欧米や韓国などのメーカーも目立ってきた。円高のため輸入品にとっては追い風となっていたこともあるが、品質の向上も見逃せない。台湾や韓国製品へのアレルギーも以前よりは薄らいでいることも市場開拓の上で有利に働いている。海外メーカーの製品によっては、国内商社が窓口だけで、製品は海外メーカーから直接、顧客である海外の日系メーカーの工場に直送されるケースもある。
もう一つ、海外メーカー製品の扱いが最近増えつつある要因として、日本メーカーが国内市場への注力度を下げつつあることが、海外メーカーにとってビジネスチャンスを生み出す機会につながっている。つまり、日本メーカーが成熟した国内市場より、海外市場重視の姿勢を強めつつある中で、海外メーカーはその裏を行く戦略ともいえる。商社にとっても、商材が増えることは歓迎すべきことであり、特に日本メーカーが持っていないような特徴ある製品は、今後の売り上げを伸ばす上で重要となってくる。
効率的体制で新たな市場創出
関東地区はいままで、市場が大きいことから、中部や関西地区からの進出を狙っている商社も多く、ここ数年資本参加や合併の動きが活発になっている。同じ商社でも、制御系、電子部品系、電材系、工具系、計測系などに分かれるが、市場が工場以外にも広がりを見せていることから、それぞれの商社が自社の強み、製品、販売エリアを補完するような新たな動きも出始めている。効率的な体制をとることで、新たな市場創出につなげようというものだ。
市場の成熟化と空洞化、通信販売の浸透など、取り巻く環境が大きく変化するなかで、事業継承問題も浮上し始めている。「気づき」の視点から市場を見直し、製販の一体と、商社間が連携した市場深耕への取り組みがいま必要だ。