中部地区の経済動向は、主要産業の自動車・自動車部品は、トヨタ自動車などが北米や東南アジアを中心に好調な販売が続いて堅調な状況にあるが、国内や欧州においては伸び悩みの感もあり、設備投資には慎重な姿勢が見られた。また、電子部品・デバイスは引き続き増加しているほか、工作機械も最近持ち直してきている。東京オリンピックの開催決定は、中部地区では今のところ大きな影響は見られないが、リニア中央新幹線の早期開業などに期待がかかっている。一方、全国と同様に、不安材料として中国経済の先行き、消費税率の引き上げ、資源原材料高などが挙げられる。
中部地区の商社は、こうした社会情勢に合わせて、顧客の問題解決に取り組みながら、付加価値の高い製品、新事業関連の新製品を開発して顧客に提案、多彩な製品を供給し続けている。
中部経済産業局発表の最近の管内総合経済動向で見ると、鉱工業生産(8月速報)は、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業、鉄鋼業などが上昇したことから、前月比2・8%増と2カ月連続で上昇し、前年同月比は5・8%増と2カ月連続の上昇となっている。
主要業種では、輸送機械の生産で乗用車は北米向けが堅調に推移しているものの、国内向けが横ばいとなっていることから、全体としては横ばい。自動車部品も、北米向けが堅調に推移しているものの、国内向けが横ばいとなっていることから、全体としては横ばい。
金属工作機械は、国内向けは下げ止まりの動きが見られ、海外向けは北米向け、アジア向けに動きが見られることから、全体としては横ばい。電子部品・デバイスの生産は、集積回路と液晶素子が、スマートフォン向けを中心に増加。
開閉制御装置・機器は、自動車向けが横ばいとなっているものの、家電向けに持ち直しの動きが見られることから、全体としては緩やかに持ち直している。電動機は、自動車向けが横ばいとなっているものの、海外向けに動きが見られることから、全体としては持ち直しの動きが見られる。
金属工作機械について、さらに詳しく見ると、8月の中部地区の金属工作機械メーカー主要8社の総受注高は、370億5700万円(前年同月比19・8%増)と2カ月ぶりに前年を上回り、前月比は13・1%増となった。
国内受注は、一般機械工業向けが45億2100万円と15カ月連続で前年を下回り、自動車工業向けが33億400万円と2カ月ぶりに前年を上回り、全体では前年同月比12・3%増と2カ月ぶりに前年を上回った。
配電盤、キャビネットなどに関しては、設備投資が下げ止まりつつあり、新設住宅着工戸数や民間非居住建築物棟数も堅調に推移しているが、工作機械業界の受注が低調な動きだ。太陽光発電システム関連製品、データセンター向けなど情報通信市場が今後も期待されている。
その他、この地方では、国内初の小型のジェット旅客機「MRJ」を製造する三菱航空機など航空宇宙産業の関連企業が多く、期待がかけられている。
こうした中、中部地区のFA・制御機器流通商社は、顧客の海外進出に連携して、海外での事業展開に力を入れるところも多い。海外でのSEの育成、協力メーカーの発掘、国内からの支援体制構築、海外におけるエンジニアリング体制の強化や、現地調達企業の発掘、パートナー企業との提携、海外の新商材輸入など様々な施策で海外事業を強化している。中国は経済がやや停滞しており、日中間の国際関係が微妙でリスクも考えられることから、チャイナプラスワンとして、タイやインドネシアなどの東南アジア諸国が注目されている。
国内市場は成熟期にあることから、新規アイテムの発掘、新ビジネスの構築なども不可欠だ。蓄電池、燃料電池など環境に配慮する部材関連、ハイブリッド車関連の商材などが対象となる。
中部地区の産業の中核を成す自動車、工作機械、電機関連業界などは、海外比率が高く、為替の影響を受けやすい。現在は円安傾向にあるが、先行きは不透明だ。株価も現在は比較的上昇機運にあるが、今後はどう動くか予測は難しい。中部地区の商社は地道な提案営業活動、グローバル化、ものづくり活動などで不確実な時代を乗り切ろうとしている。
関西経済は、生産や輸出、さらに設備投資などが上向いてきており、FA業界も「持ち直しているのではないか」という声が聞かれる。近畿経済産業局の調査によると、関西経済の生産は、鉱工業指数が前月比0・8%増と、2カ月連続で増加。輸出も前年同月比15・7%増と6カ月連続の増加となっており、金額ベースで前年を大幅に上回っている。
設備投資は、維持・更新や増強のための投資を中心に動き出しており、2013年度の設備投資計画(9月調査)は、全産業で前年比5・4%増(全国3・3%増)で、業種別では、製造業同4・3%増、非製造業同6・1%増となっている。企業の景気予測調査では、全産業で同12・3%増(全国9・1%増)を見込んでおり、前向きに捉えている企業が多い。業種別では製造業同16・0%増、非製造業同9・4%増となっているが、企業の規模別を見ると、大企業が同17・1%増に対し、中堅企業では同27・9%減を予測しており、中堅企業が厳しい見通しを持っている。
制御機器・電子部品が大きくかかわる半導体製造装置業界は、半導体製造装置については、日本半導体製造装置協会が7月に発表した予測では、今年後半からメモリーメーカーの設備投資回復が見込まれることから、日本製装置の13年度販売高は、前年比10・2%増の1兆1328億円、14年度は11・6%増の1兆2648億円と、2年連続の2桁成長を予測。15年度についても4・7%増と継続的な成長を予測しており、今後、しばらくはFA制御機器業界にとっても追い風の状態になりそうだ。
こうした半導体製造装置業界の動きに、関西のFA業界も敏感に反応し、制御機器・電子部品商社では、今年下期や来期に向けた具体的な商談が出始めたことで、下期にかける期待が高い。
このような状況下、関西地区の各商社では、本来の商社機能の基本に加え、自社製品を開発・提供するメーカー機能や、ソフトウェアやシステム設計を開発・提供する開発機能などの強化を図っている。顧客の求める内容が、これまでの単なる機器提供だけでなく、システムの設計・開発、カスタマイズ化、きめ細かなサポート体制に加え、省エネなどの観点から各種のエネルギー・マネジメント・システムをトータルとして提案して欲しいという内容も増えており、総合的なソリューションとして提案する商社が増えている。
ソリューションを、ネットワーク、エコ、バッテリー、ライフスタイルの4つに分離し、各ソリューションを個別に推進することで、顧客の事業スタイルやライフスタイルに新しい提案を行っているところもある。
また、技術系商社では、ソフトウェア開発を積極的に推進するため、ソフトウェア開発を専門とする技術系企業をグループ化、相乗効果を発揮している。すでに、CADソフト開発などで実績を挙げており、今後もスキルアップを図り幅広い案件に対応していく方針である。
ものづくりサービスの提供に注力する商社では、電子機器の受託生産(EMS)と、金属加工の受託生産(MMS)を統合した事業を発足させ、新規事業の柱として育成を図ろうとしている所もある。