鉄道産業の裾野が拡大している。鉄道車両はもちろん、運行システム、軌道、土木、さらには駅ナカに代表される駅を利用した産業振興まで、その効果が広がっている。鉄道は環境への負荷が小さく、さらに安全・確実な乗り物として、国際的にも評価が高まっており、今後も波及効果が期待される。
年率3~4%の成長
CO₂の排出量の少ない鉄道は、地球温暖化抑止につながる乗り物として評価を高めている。国際的にも鉄道は、環境負荷が他の交通機関に比べて少ないという背景を追い風にして、今後も堅調に拡大していくとする見方が一般的だ。
世界の鉄道関連市場は一説には17兆円とも言われているが、実際は10兆円前後と見られており、年率3~4%の成長が続くとすると見方が強い。20年後には倍増近い市場に成長することを期待する声もある。
このうち、鉄道車両の市場規模は約2兆9000億円と言われている。このうち欧州市場が約40%と高く、次いで中国が約20%、他は日本、北米、他のアジア地域が各約10%と見られている。
日本では、東京・品川―名古屋間のリニア新幹線の工事が進んでおり、その効果が今から期待されている。
一方、海外では新興国を中心に旺盛な鉄道敷設計画が進んでいる。中国、インド、ベトナム、タイ、ロシア、カナダ、アルゼンチン、トルコ、イラン、サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、南アフリカなどで進められている。
鉄道のCO₂排出量は、輸送に伴うCO₂排出量のわずか3%とも言われ、今後高速鉄道の敷設進展や貨物の鉄道輸送への切り替えなどが進むと、なお一層CO₂削減効果の発揮につながってくる。
鉄道産業は、非常に幅広いシステム構造で構成されており、それだけに産業として波及する効果も大きい。
鉄道産業は大きく電気・機械製品と土木に分けられるが、技術的にも構造的にも波及効果が大きいのは電気・機械製品である。車両、信号保安、鉄道制御・管理などのシステム関連、土木を除くインフラ関連、それに鉄道に付随するサービスなどである。
鉄道車両を構成する電機品としては、モータ、インバータ・コンバータなどの変換制御装置、変圧器、補助電源装置、集電装置、抵抗器、無線装置、放送装置、空調機器、発電機、表示機器・照明などのほか、IGBTなどの各種半導体、端子台・コネクタ、プリント基板、ファン、冷却フィンなどの部品が使用されている。
日本は世界トップレベル
また、機械部品・装置としては車体、台車、駆動ギア、ギアケース、ブレーキ装置、ドアシステム、ディーゼルエンジン、動力伝達装置、締結部品、ギア、車輪、車軸、ベアリング、バネ、オイルダンパー、パンタグラフ、汚物処理装置などが、素材として鉄鋼・ステンレス鋼板・アルミ合金、鍛造、鋳物、型材、各種電線、ガラス、ゴム、プラスチック塗料、シール材、シート材などがある。
日本の鉄道技術、運行システムは世界トップレベルと言われている。国内外での鉄道関連市場はまだまだ拡大しそうだ。