今2013年度は、日本の製造業にとり、設備投資内容の分岐点になる。これまで設備投資を支えてきた「能力増強」が、「維持・補修」に抜かれる予測である。過去の新工場建設ブームは終わり、能力増強投資は生産拠点の海外移転で国内向けが減少しつつある一方、既工場の一人当たりの生産性向上を図る目的で、「維持・補修」や「合理化・省力化」投資が確実に増加している。
日本は、工場の新設から維持・補修へ、生産設備も同様の歩みを始めた。
経済産業省の工場立地動向調査によると、1969年は品不足騒動の中、工場立地件数が5853件に達した。その後、下降線をたどってきたが、それでもバブル崩壊直前の89年には4157件に戻した。しかし、91年から現在までの長期デフレ下での不況、円高、オイル高が続き、2010年の869件まで1000件を下回っている。11年にようやく1023件、12年1229件と上向きだしたものの、バブル崩壊前の約3割である。
新工場建設のブームは去ったのである。同時に、量産型生産品はアジアへ生産を移管しており、国内工場は量産型製品に関してはマザー工場化の方向に向かい、多品種少量型工場では設備の更新で一人当たりの生産性向上を図る傾向が強い。生産設備の維持・更新と合理化・省力化投資を含めると製造業では約4割になる。
製造業では今年度、設備投資動機で過去1位を堅持してきた「生産能力」が、主役の座を「維持・補修」に明け渡す。
日本政策投資銀行の大手・中堅企業の設備投資計画調査でも逆転が浮き彫りになっている。
もっとも、その兆候はあった。2012年度の製造業は、「能力増強」が24・9%、「維持・補修」が24・7%と伯仲するなかで、素材産業は「能力増強」22・6%に対し、「維持・補修」は35・1%で、すでに上回っている。
FA業界にも興味深い傾向
製造業の設備投資は、維持・補修と合理化・省力化は同時に行われる。両者を合わせた傾向も、FA業界には興味深い。
同調査では、12年度の製造業は「維持・補修」と「合理化・省力化」を合わせると、36・8%に膨れ上がる。ちなみに、「能力増強」は24・9%である。素材型を見ると、両者で49・1%に達し、能力増強の2倍強である。今13年度は50・1%と過半を占める計画である。
加工・組立産業も、12年度の「維持・補修」と「合理化・省力化」は27・8%、今13年度計画は29・2%へ増加する。
日本の製造業の設備投資は確実に変わりつつあり、FA機器メーカーも動向に合わせた製品メリットを訴求するときが来た。