進化を続けるPLCopenとIEC61131-3 PLCopen for efficiency in automation 1,PLCopen®韓国支部設立 2.IEC61131-3の目的と特徴 3.IEC61131-3 Ed.3のリリース 4.東京オリンピックとJISB3503

PLCopen®はPLC(Programmable
Logic
Controller)のプログラミング言語に関する国際標準規格(IEC61131-3)の普及活動を行う第三者機関である。規格発行前の1992年に設立され、今日まで約100社の会員が登録している。

オランダにある欧州本部を中心に北米、日本、中国に支部を置き、今年の9月には新たに韓国支部が開設された。日本においてはPLCopenR
Japanが2002年から本格的に普及活動を開始し、ベンダ会員18社(PLCメーカ)とエグゼクティブ会員1団体(技術支援機関)によって構成され(2013年9月現在)、展示会やセミナー、ホームページなどを通じて、PLCプログラミングの開発効率化や国際標準の最新技術動向などを紹介している。他にもPLCを使っているエンジニアのためのユーザ会があり、会員数は350名を超えている。
図1.のグラフの通り、FA業界におけるエンジニアリングコストは部材のコストを上回っている。

IEC61131-3はPLCプログラミングの効率アップを目的とし、(1)~(3)のような特徴を備えている。

(1)モジュール化による可読性向上

日本で主に使われてきた従来型のPLC(IEC61131-3非準拠)はLD(Ladder

Diagram)言語のみで書かれることが多く、一見するとプログラムというよりは一筆書きの巻物のようである。

これは機能毎にモジュール化されていないがゆえに、第三者は勿論のこと、作った本人でさえも何処にどのような処理が書かれているのか分かり難く、結果としてソースコードレビューが困難になり、デバッグに要する時間を増やしている。

これに対しIEC61131-3では、PLCのシステム構成、グローバル/ローカル変数、POU(Program

Organization

Units)といったプログラムモジュールなどからなる階層構造モデルを規定している。(図2)

POUは機能毎に分類されたプログラムの単位で、何処にどのような処理が書かれているのか第三者でも容易に判断することが出来る。プログラムのモジュール化は「ソフトウェア設計仕様書」の作成や「プログラムテスト」の効率化を図れるだけでなく、保守の容易性(ダウンタイム短縮)にも貢献する。機能単位にモジュール化されたプログラムは可読性が良く、十分なコメントが加わっているためソースコードそのものが仕様書としての情報量及び質を備えている。

(2)部品化による再利用性向上

頻繁に使う共通的なモジュール(要素)はFB(Function

Block)として部品化・文書化しておくことにより、流用あるいは再利用することが可能である。一度使った実績のあるFBを再利用することは開発の効率アップのみならず、品質向上にもつながる。更に、自社ノウハウに該当するようなアルゴリズムなどはブラックボックス化してFBの中に隠蔽することが出来るのでセキュリティとしても有効である。

PLCopenRではMotion

control用のFBやSafety用のFBなどを標準化し、ベンダ各社のツールへのインプリメント(実装)を促している。これらFBの技術仕様書やユーザ応用例(包装ライン)については、PLCopenR

Japanによって既に和訳され、ホームページ(ユーザ会員サイト)で公開している。

(3)万国共通言語

言うまでもなくIEC61131-3は国際標準規格であり、ここで規定されている5種類のプログラミング言語はPLC技術者の万国共通言語であり、英語と同様に有効なコミュニケーション・ツールとなる。日本で主に使用されているLD(Ladder

Diagram)をはじめ、FBD(Function

Block

Diagram)、SFC(Sequential

Function

Chart)といったグラフィック言語とIL(Instruction

List)、

ST(Structured

Text)と呼ばれるテキスト形式言語について定めており、技術者のスキルや処理の内容・目的に応じて言語を使い分けることが可能である。勿論、今まで慣れ親しんだLDだけのプログラミングも可能である。

海外に生産拠点を開設するユーザ企業にとって、IEC61131-3をマスタした技術者の現地採用は比較的容易であり、技術移管(伝承)に要する時間も大幅に短縮される。
現在広く使用されているIEC61131-3は2003年に発行されたEd.2がベースであるが、2008年にその改訂作業が開始され、今年の2月にEd.3がリリースされた。今回の規格改訂の目玉の一つは“オブジェクト指向”の導入である。ご存知の通りオブジェクト指向は既に主要なプログラミング言語に取り入れられており、ソフトウェアの生産性を格段に向上させている。そこで、計測・制御の分野への導入についてもその必要性が増し、特にヨーロッパにおいてはその要請が大変強かった。

オブジェクト指向の導入は日本国内においては賛否両論あったものの、最終的には導入が決定された。今回導入しようとしたオブジェクト指向の要素としては、従来のFBを拡張すると共に、クラスの概念を導入し、それにメソッド、インターフェース及びオブジェクトの継承の概念を定義するものである。しかしながらFBの拡張は、従来のFBを残したままでオブジェクト指向の機能を持たせるというものであり、その修正作業は容易ではなかった。

FBはカプセル化と再利用を目的に導入した概念で、もともとオブジェクトの性質を持っている。FBのボディにアルゴリズムを記述するので、このアルゴリズムはメソッドに相当する。さらにFBはデータ型の一種で、新しいFBが定義できることから、完全ではないが継承の機能も備わっている。したがって、今回の改訂では、インターフェースを持つFBはフィールド機器が具体的に決まらなくてもシステム全体を先行して構築し、フィールド機器が決まってからその部分だけを機器に応じてインプリメントすればよいとされている。また、同種他社のフィールド機器に変更したければ、そのインターフェースを実装した別のFBを利用すればよく、もとのFBそのものを変更することなく実現できる。

現在、Ed.3はPLCopenR

Japan、JEMA(日本電機工業会)、NECA(日本電気制御機器工業会)の3団体によってJIS

3503のための改訂(翻訳)作業が進められている。
2020年の東京オリンピックに向けて、首都圏を中心にインフラ整備が進められる。国土交通省では「公共建築工事標準仕様書」を発行しており、電気設備工事編の中でJIS

3503準拠のプログラマブルコントローラを指定している。JIS

3503はIEC61131-3を和訳したものであり、全国の公共建築工事にはIEC61131-3準拠のPLCが使われている。

(筆者=PLCopen

Japan

代表幹事

松隈隆志氏)
システムコントロールフェア2013出展のご案内

PLCopenRは、11月に開催されるシステムコントロールフェアに出展いたします。IEC61131-3準拠の商品展示や最新技術動向を紹介するセミナーを行います。

期間:2013年11月6日(水)~8日(金)

会場:東京ビッグサイト

西2ホール

小間番号S-79

セミナー:11月6日(水)13:30~14:00

西1ホール2階

セミナー会場A
PLCopen

Japan入会案内

ユーザ会員(会費無料)への入会申込みは下記URLより

http://www.plcopen‐japan.jp/poj.html

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