トータルコストダウンを実現するFLEX対応製品 オリエンタルモーターがバリエーション充実 ◇新製品フラッシュ◇

わが国の製造業は、政府の成長戦略に呼応して設備投資に前向きであるが、その内容は能力増強ではなく、トータルコストダウンを主眼とした生産設備の更新にある。部品選定から始まり装置設計・導入において、機械を容易に制御でき、制御系と情報系の統合へFAネットワークと簡単に接続できるシステムを構築し、コストダウンを実現する傾向が強まっている。

この生産現場のニーズにいち早く対応するため、モーター・コントロール大手のオリエンタルモーターは、「簡単制御、簡単接続、コストダウン」を実現する「FLEX(フレックス)」対応製品のバリエーションを充実させている。

FLEXは、ドライバ1台で、I/O制御、Modbus(RTU)制御、ネットワークコンバータ経由でFAネットワーク制御に対応した制御モーターなどの製品群の総称として命名した。新コンセプトのもとFLEX対応のステッピングモーター、電動アクチュエータ、ブラシレスモーターの新製品を相次いで発売している。

生産現場の様々なモーションコントロールのニーズを盛り込んだFLEX対応製品は、ユーザーの装置立ち上げ期間の短縮、コストダウンを実現する存在として今後も注目を集めそうである。
製造現場の永遠のテーマ”コストダウン”

2008年に起こったリーマンショックは、世界の製造業の在り方を変える機会となった。

先進国では製造業の存在価値が見直され、高まっている。米国を始め欧米諸国では、所得の再配分へ製造業の支援を国家的な戦略として打ち出してきている。わが国でも設備投資の促進が産業の成長戦略のひとつとして国家的課題に浮上している。他方、新興国では先進国入りをめざし、ますます製造業の成長を前面に押し出している。

製造業のグローバル競争は、時を経るごとに激しさを増している。

そのため、世界の製造現場では、永遠のテーマであるコストダウンの追求を加速させる。生産機械においては位置制御、速度制御を高度化させて、生産性を高める方法が採用されているが、IT通信技術の発達に伴い、多様な制御方式が登場し、その有効な活用で高品質のトータルなコストダウンを実現するニーズが高まっている。

現在採用されている制御には、I/O制御、コンピュータまたはタッチパネルによる制御、シリアル通信による制御、FAネットワーク制御がある。通信方式もI/O信号、Modbus(RTU)、RS-485など多彩である。

こうした多様な制御方式に対し、モーターや制御機器も斬新な発想による開発がますます期待されているが、オリエンタルモーターでは、いち早く最適な制御方式を選択し接続できる製品を開発した。これがFLEX対応製品である。

簡単制御・接続、コストダウン可能なFLEX

FLEX対応製品は、ドライバ1台でI/O制御、Modbus(RTU)制御、ネットワークコンバータ経由でのFAネットワーク制御が可能である。FAネットワークは、CC-Link、MECHATROLINK、EtherCATと接続できる。しかも、近年、製造現場から要求されている「簡単制御」「簡単接続」そして「コストダウン」にマッチしたコンセプトで登場しており、ユーザーの満足度を高めている。

FLEX対応製品は、位置決めデータをドライバ側に持たせることにより、PLCからのI/Oのみで運転を可能とする。

上位での複雑なラダー作成や位置決めユニットを削減でき、よりシンプルな制御システムを構築できる。

また、複数軸を様々なFAネットワークで制御する場合も、対応のネットワークコンバータを介したネットワークシステム構築により、位置決めユニットの削減や配線作業の削減といったコストダウンを実現できる。(下図参照)

上位コントローラのシリアル通信を使ったModbus制御の場合、ドライバと直結することにより、ネットワークコンバータを使用せず、より安価なネットワークシステムを構築できる。
<位置制御

ステッピングモーター>

■クローズドループステッピングモーターユニット

αSTEP

ARシリーズ

同社独自のクローズドループ制御で、位置情報、アラーム出力、押し当て運転など多様な機能を搭載している。経済的な価格で提供。位置決め点数64点。

■新5相ステッピングモーターユニットAC電源入力RKⅡシリーズ

フルタイムマイクロステップドライバ採用の新設計。

高効率モーターと小型ドライバによる低振動・経済的な価格のユニットである。エンコーダ付なら脱調検出も可能。位置決め点数64点。

■5相ステッピングモーターユニットDC電源入力CRKシリーズ

低振動タイプ。コンパクトなドライバに位置決め機能を内蔵している。位置決め点数63点。

■ドライバ一体型5相ステッピングモーターPKAシリーズ

ドライバとモーター間の配線が不要で、装置の省スペース化、小型化、また配線工数の削減にも貢献する。位置決め点数64点。

<速度制御

ブラシレスモーター>

■ブラシレスモーターユニットBLEシリーズRS-485通信タイプ

サーボモーターのような速度特性をインバータに近い価格で実現。低速から高速までフラットなトルクと高い速度安定性を誇っている。

<位置制御

電動アクチュエータ>

■ARシリーズ搭載の電動スライダEASシリーズ

ARシリーズにボールねじを組み付けた製品。設計納期短縮に貢献する。ストローク50~850mm。位置決め点数64点。

■ARシリーズ搭載の中空ロータリーアクチュエータDGⅡシリーズ

ARシリーズに大口径中空回転テーブルを組み付けてある。インデックス駆動などに最適である。位置決め点数64点。

■CRKシリーズ搭載のコンパクトリニアアクチュエータDRLⅡシリーズ

CRKシリーズとボールねじを一体化した。デッドストロークをほぼゼロにした構造で、小型ワークの押し引きや微調整用途に最適である。

<FAネットワーク接続>

■ネットワークコンバータ

上位FAネットワークの通信プロトコルをFLEX対応製品用のRS-485通信プロトコルに変換する。接続はRS-485ケーブル1本で完結。

オープンネットワークのCC-Link、MECHATROLINK-Ⅱ、MECHATROLINK-Ⅲ、EtherCATに対応できる製品を揃えている。

便利なFLEX、便利なツールも用意

FLEX対応製品は、上位ネットワークが代わってもモーター・ドライバはそのまま使えるので、使い勝手が良く便利である。また、I/Oスレーブ的な位置付けで、各種ネットワークに接続できるので、ネットワークからの簡単な制御でリーズナブルに多軸を構成できるメリットもある。

しかも、各社タッチパネルメーカの画面サンプルも用意しており、接続性の向上、設計時間の短縮も可能である。
位置決めの常識を変える新開発センサ搭載

クローズドループステッピングモーターユニットαSTEP

AZシリーズ

同社は、新開発のバッテリ不要な多回転アブソリュートセンサ(ABZOセンサ)を搭載したクローズドループステッピングモーターユニットαSTEP

AZシリーズを発売した。FLEX対応機種も揃っている。

新開発のABZOセンサは、小型・低コストでバッテリ不要な機械式多回転アブソリュートセンサ。基準となる原点から、モーター軸で1800回転分の絶対位置が検出可能である(特許出願中)。

AZシリーズは、ABZOセンサがモーターの現在位置を検出し常に位置を逃さないという、絶対的な信頼のおける新タイプ。

これまでの位置決めの常識を変える画期的な新概念の新製品といえる。

<ABZO搭載のAZシリーズ特徴>

■原点復帰の時間を短縮■

アブソリュートのため、原点復帰運転にかかる時間を大幅に短縮できる。位置決め運転中に電源が遮断しても維持情報は保持される。しかも、位置決め機能内蔵タイプの場合は、非常停止時や停電時からの復旧の際、原点復帰しなくても位置決め運転を再開できる。また、外部センサを用いずに原点復帰が可能なため、センサ感知の仕様を気にせず高速で原点出しが行え、マシンサイクルの短縮につながる。

■外部センサが不要■

原点センサ、リミットセンサなど外部センサが必要なく原点復帰運転ができる。

そのため、センサ費用や配線費用が削減でき、システムコストダウンに貢献する。省配線となることから、装置設計の自由度がアップする。また、外部センサが不要なため、水や油が飛散する環境下でも誤動作する心配がない。

■バッテリ不要■

バッテリ不要であるのも大きな特徴である。

位置情報は、ABZOセンサで検出可能なため、電源を落としても、ドライバとの接続を解除しても位置情報をモーター側で保持できる。

そのため、(1)バッテリ交換用のスペースが要らず、ドライバ設置場所の制約がない(2)海外出荷といった長期間の装置搬送においても、位置情報を保持できる(3)メンテナンスを削減など、ABZO搭載のAZシリーズは、ユーザーメリットが非常に大きい。

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