ものづくりとサービスの融合化、いわゆる6次産業の台頭がわが国の成長戦略の柱になるといわれる中で、そのビジネスモデルを追求するユニークなシンポジウムが日本開発工学会(中上崇会長)主催で開催された=写真。テーマは「2次産業×3次産業、融合化ビジネスを創生する」。
農業の6次産業化について、角忠夫・松陰大学大学院教授は、わが国のGDPの70%が3次産業、25%が2次産業で、1次産業はわずか5%である。農業人口は1990年の482万人に対し、2011年には260万人に急減している。農林水産省は、1次産業の6次産業化で10年後に10兆円産業を打ち上げていると指摘。日本ハムやサイゼリヤを例に挙げ、農業を21世紀の花形産業にするためには、6次産業化以外にないとし、ものづくりとサービスの融合の究極のビジネスモデルであると強調した。
小平和一朗アーネスト育成財団専務理事は、エンジニアリング・ブランドとホスピタリティと題して2次産業と3次産業の融合化の検証をメガネメーカー、歯科材料メーカー、飲料メーカーを例に行った。ホスピタリティとは売り手と買い手との間の擦り合わせで、エンジニアリング・ブランドはユーザーのソリューションでイメージアップすると説く。商社は、最終ユーザーの情報を入手し、中間資本財メーカーにフィードバック、両社の利益を明確にすること。そのため、技術者の感性とコミュニケーション能力を磨くことが大切である。
永井明彦・名古屋工業大学大学院生は、イノベーティブな商社DNAが日本を再生するが、その役割はメディエータが担う。そして、従来の垂直マッチング型コーディネータに対して、新しいコーディネータ経営を生み出すメディエータのコンセプトを提案した。メディエータの特徴は、情報力を持つ、事業プロセスに立脚して戦略を考える、リソースを提供する、事業に必要な中核機能を役割として担う、仲介料やキャピタルゲインではなく事業から収益を得ることを挙げた。
群馬大学研究・産学連携戦略推進機構、日立製作所インフラシステム総合営業本部の藤井亨氏は、スマートインフラビジネスの一考察―パッケージ型サービスモデルとは―で製造業とくに電機業界について発表した。わが国の製造業の競争軸は、製品競争力からサービス競争力へシフトする。総合電機メーカーの脱コモデティ化に向けた戦略として、既存サービスの高付加価値化、製品とサービスのパッケージ化に向かう。社会イノベーション事業に特化、その中でサービス事業の成功が利益創出のカギとなると指摘する。ものづくりから「コト」づくりへの道筋を示していた。また、専門メーカーにも触れ、単独製品から得られる「解」の提供、すなわちソリューションサービスに向かうと強調した。
中上会長は「イノベーションが日本にきたとき、技術革新ととらえられたため、壁にぶつかった。イノベーションの本来の意味に立ち戻り、新しい概念を追求する」とあいさつした。