各種の産業用オープンフィールドネットワークの中でも、グローバル展開が本格的に進んでいるものがCC‐Link協会(CLPA)が普及活動を進める「CC‐Link」ファミリーである。高品質のものづくりで知られる日本で生まれたというバックグラウンドが、生産設備に高品質、高信頼のネットワークの採用を希望するユーザーに支持されている。特にアジアなど新興国のメーカーは、単なる生産コストの安さだけを追求するレベルから、品質向上も目指すレベルにシフトしている。その実現の手段としてCC‐Linkにかかる期待は大きく、新興国での採用が急速に拡大している要因となっている。
そのCC‐Linkファミリー普及活動に、グローバルレベルで有力なメーカーが積極的に参画する方針を決めた。産業用センサー大手のドイツBalluff
GmbH(バルーフ社)だ。大手FA機器メーカーの同社は、特に生産現場の自動化に貢献する産業用センサーの有力メーカーとして知られ、世界7カ国に生産拠点、54カ国・地域に販売拠点を持つ。アジアへの進出に早くから積極的で、またアジアでのCC‐Linkの優位性も理解していた同社は、欧州のセンサーメーカとしてはいち早く対応製品のラインアップ増を図ってきた。
同社は2013年9月、CLPAの幹事会に参画することになった。CLPAの幹事会には従来7社が名を連ね、重要な意思決定を行ってきたが、8社目として新たにBalluffが参画する。つまりCLPAとCC‐Linkファミリーの将来の方向付けに、Balluffがこれまで以上に強く関与するようになる。
Balluffが幹事会参画を決めた理由の一つに、CC‐Linkファミリーのアジア市場での存在感がある。成長を続けるアジアのニーズをどう取り込むかは、世界の製造業全体に共通するテーマとなっている。製造業をセンサーで支えるBalluffにとっても重要であり、推進のためにはアジアで支持されているネットワーク規格への強いコミットメントがなくてはならない。
そのネットワークとして、Balluffはアジアで幅広い採用実績を持つCC‐Linkに着目したのである。アジアに強いCC‐Linkとの強固な協力関係構築で、アジアの市場ニーズを確実に吸い上げ、製品に反映していく方針だ。
欧州での地位向上にも好影響
CLPA側にとっても、Balluffの幹事会参画の意義は大きい。対応センサーの品ぞろえ拡大が期待できるからである。生産現場の改善目的の一つである安全性向上に対する意識が、先進国だけでなく新興国の製造業でも強まる中、センサーの品ぞろえの広さはそのままソリューションの幅の広さにつながる。センサー大手の同社のCC‐Link関連事業強化で、それが大きく前進するのは間違いない。
CC‐Linkファミリーの欧州での地位向上にも、好影響を与えることになりそうだ。ドイツに本社を置く同社のCLPA幹事会入りは、CC‐Linkへの強い支持の表れであり、欧州のメーカーや関連ベンダーにも波及することが予想される。
テストセンターもグローバル化で
対応機器拡充を支援
CC‐Linkのグローバル化推進を目指したCLPAの体制強化は、これが最初ではない。2012年には、中国の上海電機菱電節能控制技術有限公司(SERT)がCLPAの幹事会に参画している。SERTは中国の大手重電メーカーである上海電気集団のグループ企業で、省エネシステムやFAシステムの分野に強みを持つ。CC‐Linkファミリー対応機器を活用したシステム設計・開発の実績も数多く、中国での普及施策などの展開でその存在感を示している。
活動をリードする幹事会だけでなく、CC‐Linkファミリー対応機器の開発を支援する体制もグローバル化が進んでいる。CLPAは既に世界7つの国・地域で拠点を設けており、うち韓国・中国・北米・欧州の拠点には、CC‐Linkの対応機器を認証するための「コンフォーマンステストセンター」を、日本の本部同様に設置している。また、インドにも近日テストセンターが立ち上がる予定だ。
ユーザーであるメーカーが、CC‐Linkファミリー対応機器を安心して導入できるようにするには、どの機器を選んでも一定以上の機能が保証される仕組みがなくてはならない。テストセンターはそのための検証作業を担うが、それが日本の本部だけしかないようでは、海外で対応機器を開発するベンダーには大きな負荷になってしまう。テストセンターをグローバルで多拠点化することで、対応機器のグローバルレベルでの拡充を支援しているのである。
製造業にとってグローバル展開はもはや避けては通ることのできないテーマであるが、多くの日本のメーカーやベンダーはその推進に四苦八苦しているのが実情。しかしCC‐Linkファミリーは体制面でいち早くグローバル化を実現し、対応機器メーカーの現地展開を支援している。グローバルに広がるCC‐Linkの波に乗る形で、メーカーやベンダーがグローバル展開を図るということも可能だろう。