操作用スイッチ着実に市場拡大 安全性、保護構造、デザイン性向上 国際規格への対応進む 多岐にわたる応用分野 東京五輪に向けインフラ投資消費税増税に伴う前倒し需要環境・省エネに絡む設備投資 半導体製造装置の上昇基調が追い風

操作用スイッチは、機器のインターフェイス部分を支える制御機器として重要な役割を担っている。用途は半導体製造装置分野や工作機械・ロボット分野、自動車製造分野などの産業分野のほか、情報機器、アミューズメント機器、セキュリティ機器など多岐にわたっている。2020年の東京五輪開催に向けたインフラ関連の投資や消費税増税前の前倒し需要、さらに環境や省エネに絡む積極的な設備投資が予想され、今後さらなる市場の拡大も見込まれる。機能面では、安全性や保護構造、デザイン性などの向上が図られ、国際規格への対応が進んでいる。
操作用スイッチの主要市場のひとつである半導体製造装置は、ここに来て急ピッチで上昇基調を強め、操作用スイッチ市場にも追い風になっている。日本半導体製造装置協会が発表しているBBレシオは、13年に入ってから3月を除き、すべての月で1・1以上を示しており、特に9月は1・25、10月は1・59と上昇している。
10月は前年同月比2桁伸長

日本電気制御機器工業会(NECA)がまとめている操作用スイッチの出荷統計は、12年度が360億円(前年度比3・1%増)で、13年度上期は同0・6%減とほぼ横ばいだったが、10月だけを見ると前月比で3・9%増加、前年同月比で11・8%増と2桁の伸びを示している。13年下期(10月~14年3月)は、産業用汎用電気機器全体の輸出が好調に推移するものと予想されており、制御機器全体での需要の底上げが期待される。

これに加え、東京五輪の開催が決定したことから、これにかかわる建設・土木分野での設備投資やインフラの整備・再構築などが確実視されており、電気機器や制御機器への波及効果が見込まれている。

さらに、来年4月の消費税増税に伴う前倒し需要や、環境や省エネに絡む設備投資も予想され、再生可能エネルギーを活用するためのパワーコンディショナやスマートメーター、電源・蓄電関連の需要拡大なども、操作用スイッチの需要増につながる。

社会インフラ関連では、電力設備、上下水道、鉄道車両、ビル建設・リニューアルなどで操作用スイッチの需要が拡大している。発電設備の投資は、ソーラーを筆頭に、火力、地熱などで新設・増設・更新などが活発化し、市場拡大を牽引している。

鉄道関連も、車両、駅設備などで活発な投資が継続しているが、駅ホームドアの設置が首都圏の鉄道を中心に急ピッチで行われ、スイッチをはじめとした関連機器に波及効果となっている。

そのほか、ロボット関連、情報機器、モバイル機器、セキュリティ機器、アミューズメント分野などでも着実に市場を拡大している。

操作用スイッチは、押しボタン、照光式押しボタン、セレクト、カム、ロータリー、トグル、デジタル、DIP、シーソー、多方向、タクティル、スライドなどのほか、各種の高機能スイッチやフットスイッチ、マットスイッチなど多種多様で、使用環境や操作頻度、取り付けスペースなどを基準に選択される。

最近では小型・薄型・短胴化が進み、安全性、信頼性、保護構造、デザイン性などの向上が図られている。また、グローバル市場に対応するため、国際規格に準拠した製品が増えている。
低消費電力が大きな魅力

照光式押しボタンスイッチは、表示灯を兼備したスイッチで視認性と省スペース性が特徴である。光源にはLEDや有機ELを採用し、高輝度、長寿命、低消費電力を実現している。特に低消費電力は大きな魅力で、装置全体でスイッチを多数使用する場合、メリットが大きい。表示素子に液晶や有機ELを採用したタイプは、多彩な表現力が魅力で普及が進んでいる。

ベゼル高さを抑えた薄型タイプの照光式スイッチが浸透している。薄いことによるデザイン性の良さだけでなく、凸凹の少ない操作パネル面は、食品機械や半導体製造装置においてゴミや埃の付着を防ぐとともに、パネル面の突起が大きいと誤操作などの危険性も高くなる。

安全の確保という点から、安定した市場を形成しているのが非常停止押しボタンスイッチである。通常は使用しなくても、非常時に確実に働く機能が求められ、国際的にも色などの標準化が取り組まれている。
携帯電話の多機能化で需要増

タクティルスイッチはプリント基板に直付けし、シートキーボードスイッチやパネルスイッチなどと組み合わせて使用することが多く、特に携帯電話の多機能化に伴い、需要が拡大している。低背化、インチピッチを採用した端子が特徴で、丸洗い可能な密閉構造や照光タイプなどもあり、確実な操作感が得られる。

DIPスイッチやデジタルスイッチは、OA・情報・通信機器などで数多く使用されている。特に、操作頻度があまり多くない用途で採用されており、SMTに対応したタイプが浸透している。

DIPスイッチは、一般的に一度設定するとその後はあまり操作しないことから、接触信頼性の確保が求められる。ナイフエッジ構造などにより、フラックスなどの浸入による接触不良の解消を図るとともに、プリント基板実装後の洗浄もシールテープなしで可能である。

シーソースイッチは、電源のON―OFFなどに良く使われる最も一般的なスイッチ。比較的大電流の入り切りを行うため、操作時の突入電流による接点やハウジング対策が重要となっている。機器の小型化が進む中で、シーソースイッチの小型化も進んでいる。同時に屋外や環境の悪いところでの使用に対応して、防塵・防水対策を施した製品も増えている。

シートスイッチやパネルスイッチは、パネルデザインの自由度が高く、耐環境性も良いため、悪環境下の生産現場から携帯用の民生機器まで幅広い市場を形成している。

トグルスイッチは、IP67相当の保護構造を実現して、水のかかる用途でも高い信頼性で使用できるようになっている。操作レバーを全面照光式にした製品もあり、暗い場所でもON・OFFが操作レバーの位置で確認できる。一部のトグルスイッチやスライドスイッチは、スナップアクション方式を採用。クイックな動作で出力の安定を図り、接触信頼性を高めると同時に長寿命化を実現。

多方向スイッチは、1本のレバーで多くの開閉が可能で、細かな操作を行う用途に最適である。

カムスイッチは、多くの回路とノッチが得られるため、複雑な開閉などに対応できる。用途によって操作開閉頻度に大きな差があるため、接触信頼性の確保が最優先で求められている。
ワイヤレスタイプに注目

フットスイッチも防浸・防水性能が向上して、水中での使用や、医療分野、食品分野でも安心して使用できる。安全操作の面でも、3ポジションタイプのほか、安全ロックレバーを搭載したタイプや、ペダルの高さを低くしたタイプなどが出てきている。同時にワイヤレスタイプのフットスイッチも注目されている。Bluetoothなどを使用し、スイッチの配線をなくしており、医療現場などたくさんの機器が使用されている中で、ケーブルがあることによるトラブルを防げる。

直流(DC)機器の高圧化とソーラー発電などの増加で、AC(交流)/DC(直流)共用スイッチやDCスイッチの高容量タイプが増えている。技術面でも信頼性を確保できる材質、接点配置などをクリアしつつあることで、DC機器の普及を後押ししている。

操作用スイッチの市場は単価の低下もあり、大きな伸びにはなっていないものの、用途の拡大や確実な操作感覚などから、安定した推移を継続している。今後も、プログラマブル表示器などと用途を分担しながら、機器のインターフェイスを担う重要部品として堅調な市場を維持していくものと見られる。

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