電気制御機器、電子部品、計測機器などの海外メーカーが日本市場の開拓に再び力を入れ始めている。円安傾向の中で輸入品にとっては逆風の状態と言えるが、日本の市場構造に変化が起きつつあり、これをチャンスと捉えているところが多く、今後の動向が注目される。
1ドル80円を切るような極端な円高ドル安はなくなったものの、為替リスクを避けて国内生産から海外生産シフトの傾向が継続している。日本の電気制御機器、電子部品、計測機器などのメーカーは、国内市場の空洞化や成熟化の中で、国内市場への営業投資を弱め、海外に重点を置くところが増えているのが現状だ。
こうした市場の変化もあり、逆に海外の電気制御機器、電子部品、計測機器メーカーの中には、日本企業の営業力低下を見越して、むしろ日本市場へ攻勢をかけようとしているところが増えている。日本市場の開拓の難しさを理解して今まで距離を置いていたり、国内での売り上げ実績がなかなか伸びず苦戦していたところが多かったが、この市場の変化をチャンスと捉え、再び力を入れようとしている。
この動きに呼応してバックアップしようと取り組みを強めているのが流通商社だ。電気制御機器、電子部品、計測機器などの商社は、顧客の海外生産シフトに伴い、国内での売り上げが減少しているところが多く、一部の大手商社はこれに合わせて海外に拠点を開設し売り上げを落とさない取り組みを強めているものの、大半の商社は売り上げ減をカバー出来ていないのが実情。
海外メーカーはこうした商社の置かれている状況を日本で販売してもらえる一つのきっかけと捉え、日本メーカーにはない製品や機能、コストなどをポイントに市場への浸透を図ろうとしている。
市場のニーズも、従来の日本製品の品質、納期優先から少し変化を見せ始めており、「同じ品質であればコストの安い海外製品でも使用する」というユーザーの動きが顕在化し始めている。
鳥居電業(東京)は米のハネウェル社やMTSセンサーテクノロジー社の製品販売を今年から開始し、さらに数社の海外メーカーと取引を計画。
大和無線電機(同)は、台湾・幸亜電子をはじめ数社の電子部品を扱っており、香港の現地法人とリンクしながら商社機能を生かした最適デリバリーで顧客とのパイプをつないでいる。
日昭無線(同)も台湾のINPAQテクノロジーのアンテナ販売で実績を上げつつある。
宏業電気(仙台)はイタリアのロヴァート・エレクトリック社の電磁接触器やサーマルリレー、操作用スイッチ・表示灯、同じくイタリア・チェンブレの鉄道保線工具、圧着端子、端子台、手動工具、油圧工具、ケーブルグランド、ケーブル支持具などの販売を行っている。
ダイトエレクトロン(大阪)は、米・イートンエレクトリックのUPS(無停電電源装置)を販売しており、今後UPS以外にも扱い製品を増やす予定だ。
商社にとって、商材が増えることは歓迎すべきことで、特に日本メーカーが持っていない特徴ある製品は、今後の売り上げを伸ばす上で重要となってくる。海外メーカー製品は、日本から海外に組み込まれて輸出された場合でも、海外メーカーのグローバルネットワークによってサポートを受けられることもあり、顧客の安心感にもつながっている。このところのドル高・ユーロ高が進むことによる輸入価格の上昇懸念が残っているものの、顧客の輸出が伸びれば、素材や部品の価格上昇を吸収できるとする見方も強く、輸入機器は新たな拡大期に入りつつあると言える。