世界で進む船舶の環境対策 陸上電力供給システムが浮上

市場のグローバル化に伴う貿易の拡大で船舶から排出するCO2なども増加傾向にあり、世界で船舶の環境対策に乗り出している。IEC(国際電気標準会議)では停泊中の船舶への陸上電力供給に関する規格を発行、EUや北米では港のクリーン化へ船舶版アイドリングストップの取り組みを強化し、日本でも実証実験が行われている。

自動車に次ぎCO2排出量の多い船舶もクリーン化へ急速に進展する。船舶もいよいよモーター推進の幕開けとなりそう。

船舶のアイドリングストップは、排出ガス削減に大きな効果が認められている。日本国内の全内船舶がアイドリングストップを実施し陸上電力の供給を受けた場合、東京ドーム約400個分に相当する100万トン/年程度のCO2が削減可能と、国土交通省では試算する。

CO2排出削減効果は、内航フェリ
ー、外航コンテナ船ともに約40~50%。大気汚染物質であるSOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)は、内航フェリー、外航コンテナ船ともに約98%に達する。

船舶による環境汚染は、世界的な問題として関心が高まっている。ABB社によると、世界の4500港に10万以上の船が停泊する今日、船舶から排出されるCO2は、年間9億立方トンに達し、石炭火力発電所220基分に相当するという。

世界の物流の障壁がなくなる貿易自由化の時代に入り、世界各国が湾内で船舶のエンジンを停止し、陸上電力を使用するなど環境対策の必要性は高まる一方である。

船舶による汚染の防止のための国際条約MARPOL、およびEUは燃料の硫黄分含有量に対する絶対的な上限およびSOx、NOxの船舶からの排出の上限を規制している。カナダや米国でも規制が進んでいる。

その解決すべき最適な方法が、停泊中の船舶のエンジンの代替として陸上電力供給システムが浮上している。米国では、カリフォルニア州大気資源局法規制により、2014年までに州内の港に着岸する船舶の50%以上、20年までに80%以上が陸上電力給電システムの使用を義務付けている。
国際規格の制定も進む

国際電気標準会議IECでも停泊中の船舶への陸電供給に関する規格を発行するなど、国際規格からも制定作業を進めている。

日本では、経済産業省がゼロエミッションポート施策による港湾のエネルギーマネジメントシステムの構築へ、船舶への陸上電力供給施設の設置を推進。国土交通省は実証実験を各地で行っている。実証実験では、排出ガス削減効果はもちろんのこと、船舶からの電流の逆流防止、周波数変換などの技術課題の克服もテーマにしている。

陸上電力供給システムは、陸上の受・送電盤から陸側の電源盤に送られた電力を、船舶の電源盤で受電し船内の照明や空調設備、各種電気機器に配電する仕組み。市場規模は小さいものの、高付加価値が見込める分野である。
バッテリーで動く時代目前

小型船舶はさらに進化しつつあり、観光船や近海漁船ではバッテリーで動く時代が目の前に来ている。

日本では東京海洋大学で急速充電による電池推進船第3号船「らいちょうN」が今春進水するが、リチウムイオン電池を搭載しモーター、インバータ制御で走行する。その実用化も近い。

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