リーマンショックから5年、製造業には六重苦とまで言われる経済状況にあったが、一昨年の政権交代から、長いトンネルを抜けつつあるように見える。株価が1万5000円を回復し、超円高が是正され、企業業績に好転が見られるようになった。しかし、その間に何が起きたかを冷静に観察しておく必要がありそうだ。
リーマンショックは交通事故のようなもので、内臓に欠陥があって体調を壊したというわけではなく、突然交通事故に遭い、怪我をして血を出し倒れているという状態だった。私は、怪我は適当な治療をすれば治りは早い、すぐに止血しろと指示し、サプライチェーンを調査し、買い物を絞って、出血を止めることにした。予想通り65%にまで落ち込んだ売り上げは、翌年には85%まで回復することができた。ストップウオッチの秒針を読みながら現場改善を進めてきた製造業には、全く迷惑な事件だ。
しかし問題は、その後の回復状況だ。11月が弊社の決算期だが、リーマンショック後も、毎年数%ずつ前年を上回る売り上げを計上してきたが、残念ながら2013年度の売り上げでもリーマンショック前の07年の売り上げには届いていない。勿論、これは弊社の事情ではあるが、リーマンショック、超円高があって製造業は厳しい時代を過ごすうち、いつの間にか海外へ流出し、国内産業が縮小してしまった。それが国内取引の伸びない原因になっているのではないか。しかもその間の、新興国の技術発展はめざましく、ひたひたと日本の背中に近づいてきている。そして中国では労務費の高騰で、自動化機器市場が急激に拡大を始めており、日本のハイテク産業がそこに引き込まれようとしている。国は環境・エネルギー、健康・医療、次世代自動車・航空機など新産業の育成に動いているが、アベノミクスはまさに産業の大きな変化を先取りし、その育成に力を入れて欲しいものだ。