分岐点(2014年1月29日)

年明け早々に、台湾在住の日本人技術者が会いたいと連絡してきた。彼は台湾に渡って十数年、台湾企業を上場にまで成長させた立役者の一人である。彼は工場の立ち上げや生産管理、品質管理を担い、全てを任されてきた。70歳を超えているので退職したと思っていたが、今でも週のうち1日は出社しているという。

来日の目的は、1台数千万円の高額成形機を数百台発注したメーカーとの仕様打ち合わせである。話を聞いていると、今は無給でボランティアのようなものだそうだ。そこまでできるのか不思議な気がしたが、日本製機械に万が一不具合が出たら日本人として恥ずかしい。だから、生産現場で品質の向上や不良率を下げて良かったといわれるよう、中国の工場にも指導に度々出かける。

彼は、台湾に永住する気持ちを固めているが、自動車も家電製品もゴルフクラブも日本製品を愛用している。別の知人は、中国でグリーンカードを取得し、日系FA機器メーカーを退職したあと、現地企業の営業で活躍している。彼らは、日本人としての誇りを失わずに、日本企業に役立つ仕事を続けることで、日本人の意識を保っている気がする。

日本は少子高齢化の時代が来ている。経済規模は縮小し、製造業は海外に市場を求めざるを得ない。日本の先端技術流出が問題になっているが、彼らのような高い意識、精神を持ちながら海外企業に勤め日本製生産機械の導入に活躍している人たちが少なからずいることも忘れてはいけない。

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