制御システム・機器各社は、家電リサイクル工場の新規設備導入や廃棄物処理施設の設備改善需要が今後期待できるため、静脈市場にも目を向け出した。昨年、家電リサイクル法が小型電子機器にまで対象を拡大したためリサイクル事業者の参入や設備増設が期待でき、さらに既設の廃棄物処理施設でも手作業解体の省力化要求が高まっている。今後、静脈産業分野の自動化・省力化投資が増えそうである。
エアコン、テレビ、冷蔵・冷凍庫、洗濯機・乾燥機の家電4品目は、2001年の家電リサイクル法で再商品化が義務付けられた。家電製品協会調べによると、現在全国で49施設が稼働しており、一昨年12月には累計取引台数が1億6000万台を突破した。
昨年4月には、対象家電品目を小型品にまで広げる小型家電リサイクル法が施行された。使用済みデジタルカメラ、携帯電話、ゲーム機などを回収しアルミ、貴金属、レアメタルなどを再利用する法律である。環境省は、小型電子機器のリサイクルシステム構築実証事業に取り組んでいるほか、経済産業省と共同で小型家電リサイクル法に基づく再資源化事業計画の認定を行っている。今月23日には市川環境エンジニアリング、フューチャー・エコロジー、リネットジャパン、豊富産業、アール・ビー・エヌなど10リサイクル事業者を認定した。
家電リサイクルは従来の4品目に、デジタルカメラなどの小型家電が加わったことで、工場の増設や自動化が進展するものと見られる。
現在の家電リサイクルは、手作業による解体・分別で主要部品を回収の後、機械による破砕・選別を行い、鉄、銅、アルミ、ミックスメタル、真鍮、基板、プラスチック、パネルガラス、冷媒フロンなどを回収する仕組み。
リサイクル工場の解体・分別作業場は集塵機、粉塵監視モニター、コンベアなどが設置されているが、人手に頼っている。エアコンはファンモーター、熱交換器、コンプレッサーなど、テレビは部品、プリント基板、パネル、プラスチックなどの取り外しを手作業で行っている。後工程の破砕・選別は、破砕機、磁力・渦電流・比重選別機が設置されている。
リサイクル工場は、製品が家電メーカーによって種類やサイズが異なるため、自動化がもっとも困難で遅れている。そのため、解体作業の効率化、高純度選別回収など自動化の余地が大きく、搬送、仕分け、解体などの機械化要求が強まっている。
産業廃棄物処理施設も同じ課題を抱えている。
環境省の統計によると、認可を受けた産業廃棄物の中間処理施設は、12年度で1万9147施設がある。ゴミ焼却施設は1189施設が稼働している。12年度の新設ごみ焼却施設は29施設である。年間のごみ処理事業経費は1兆7829億円であるが、そのうち委託を含めた中間処理費は5722億円、全体の32・1%を占める。また、中間処理の人件費690億円を加えると6412億円、36%に達し、作業の効率化投資が欠かせないのが現状である。
環境装置は、自動化の難しい分野だけに一連の処理システムは、事業主と機械メーカー、制御システム・機器メーカー、エンジニアリング会社の共同開発に負うところが大きい。まだニッチ市場といえるが、長期的に見て製造業の設備投資が期待できない今日、FA制御システム・機器メーカーは拡大が見込める静脈産業に対し攻勢をかけるものと見られる。