関東地区の流通は、昨年6月頃までは電子部品関係が、7月以降はFA機器がそれぞれ市場を牽引してきており、現在は両方とも好調を維持している。売り上げも前年同期比6~10%増の商社が多いが、1~3月の状況次第ではさらに上振れする可能性も出ている。ただ、市況は刻一刻と変化しており、メガソーラーなどの需要で不足していたパワーコンディショナーが、メガソーラーの着工の遅れなどから在庫が増加しており、一部の電子部品メーカーは生産調整を行っている。しかし一方では、自動車の増産や建設需要から鉄などの納期が厳しくなっており、ボックスや圧着端子などに影響が出始めている。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定が日本全体の沈滞ムードを一新したが、とりわけ関東地区はその効果への期待が高い。
オリンピック関連施設の建設に伴う需要は当然のことながら、50年前の東京オリンピックで建設したインフラ設備をリニューアルする動きが一挙に加速し、期待が高まっている。土木・建設だけでなく、省エネなどのスマートシティ構想に伴う電子部品や制御機器の果たす役割も大きいことから、FA流通商社にとっても大きなビジネスチャンスになろうとしている。
また、このほど施行の産業競争力強化法では、日本のものづくりを元気にするための種々の施策が盛り込まれている。中でも、ベンチャー投資の促進は、産業の空洞化が進む中で、新たな販売先を開拓しようとしている商社にとって朗報となりそうだ。今後の日本のものづくりは、大量生産から高機能や生産性アップなどにシフトしていこうとしており、今までのような増産のための投資は期待できない。その中では、独自の技術で新しい挑戦をしようとするベンチャー企業の育成は非常に重要になってくる。将来の金の卵にもなることが期待できるこうした企業の育成は、将来の顧客につながってくるだけに、商社としても今からサポートしていくことが求められる。
国内工場の設備投資が、生産能力増強から効率化や精度・品質投資に変化する中で、商社は工場内の生産設備だけを営業対象にしていたのを、工場全体、企業全体を対象にした営業視点が求められてきている。工場の省エネやIT化ニーズでは、訪問先も購買や設計だけでなく、総務部門などにも広がってくることから、女性の営業社員を活用していこうという動きも出始めている。
市場のグローバル化に対応して、海外拠点の開設は依然続いているが、製品の販売だけでなく、盤加工などエンジニアリング力も付加して、ローカルの商社との差別化や、価格だけの競争を避けようとする動きも目立つ。
さらに、海外の製品を扱いに加えることで、製品幅を充実させて新たな顧客開拓につなげようとする動きも活発化している。
リーマンショック前までの売り上げに戻っている商社はまだ少ないものの、この上昇基調を捉えて、次へのステップアップを図ろうとしている。ただ、市場構造と商品構造が以前とは異なってきているだけに、油断はできない。