販売員が担当している顧客には様々な業態がある。一般的に業態と言えば小売業や外食産業などの商業関係で用いられる区分のことを指している。例えば、コンビニ、スーパー、デパート、ドラッグストアなどのように顧客の欲求に合わせた商品の仕入れ、価格、立地、規模などの基準をもとにした態様のことを言う。電子・電機製品や計測・制御機器営業は一般商業とは違うが、顧客の態様を区分する必要がある。区分基準は商材を基準にするのではなく、営業側から顧客の全体を見て区分するのがよく、顧客の事業内容や顧客はどんな設備で物づくりをしているかなどを基準にして区分するのがよい。それらの基準で分類し、大くくりである大分類の概念がこの業界での業態ということになる。
大分類である業態には5つの種類がある。A.動力系メーカー B.非動力系メーカー C.装置産業形態ユーザー D.加工・組み立て産業形態ユーザー E.専門設備供給メーカーの5つである。いずれの業態も物づくりをしているメーカーであるが、部品や機器を販売する側から見れば、どの業態も商材を使用してくれるユーザーということになる。業態区分においてメーカーとユーザーを区別すると、部品や機器を使用して製品をつくり、その製品を物づくりのために販売しているメーカーを、メーカーとした。
実際に、部品や機器を最終的に使用して物づくりをするメーカーをユーザーとした。最初に業態A.の動力系メーカーに関して考察してみる。動力系メーカーとはモーター、ポンプ、ボイラー、油圧、空圧などの動力を搭載している機械や装置をつくっている企業であり、それらを販売している。建設や運輸機械・工作機械・自動機・産業機械や産業装置などをつくっている顧客のことである。日本が物づくりの大国になってきた過程で中核になったメーカーといえる。60年代にルイス転換点を越えた日本が人手不足になり、さらに高成長を成し遂げてきたのは業態A.の各メーカーの活躍があったからだ。人手不足に加え、当時3Kと言われた「きつい・きたない・きけん」な場所での労働に就く人が少かったため自動機や装置の需要増大につながった。90年代に入ってくると、いよいよ日本の社会は成熟し、急速な円高になると物づくりの工場建設の中心が海外に移った。
したがって物づくりの工場をユーザーとしている業態A.のメーカーは、海外からの外需の比率が多くなってきた。最近では圧倒的に外需が多いのが業態A.のメーカーである。各企業の新設増設は海外になり国内工場の多くはリニューアル需要となってはいるが、社会が成熟してくると物の多様化が起こったり、新しい物が生まれたりするので、それらをつくる新しい需要の増加も少しずつ増えていく。21世紀に入って業態A.のメーカーは国内同士の競争だけでなく、新興国を交えた海外メーカーとのグローバル競争が激しくなっている。日本勢は高品質・高機能・先端技術を盛り込んだ機械・装置をもってしのいでいる。そのため、機械や装置に使用する部品や機器も高機能を要求される。また多機能化・システム化が進み、ますます複雑になっている。
したがって業態A.のメーカーを顧客にもつ販売員は電気的知識を深めて、販売員ながらもシステム的な技術に対応するエンジニアリング的対応が必要になっている。しかしグローバルの展開は高機能や高品質一辺倒の戦略では勝てない局面も増えてくるので、販売員は商品知識やエンジニアリング力に頼るだけでなく、業態A.のメーカーの様々な変化を嗅ぎとる力が要求される。
(次回は4月9日付掲載)