国内産業の空洞化に伴い、日本のものづくりの危機が懸念されている。日本のものづくりの強みは大企業から中小企業までピラミッド型の裾野の広さであり、これらががっちりとスクラムを組んで国際競争を勝ち抜いてきた。しかし、新興国などの追い上げもあり、海外に生産をシフトする製造業が増えている。
また、新技術開発のスピードも速くなっており、投資が回収できないうちに技術が陳腐化するリスクも高まっている。
特に、中小企業にとってはこうした流れは新製品・新技術開発で、資金的にも人材的にも負担が大きい。
製造業の開発負担を軽減し、支援してくれるところとして見逃されているのが、大学との連携だ。
本書は、2007年から産学連携センターを学内に設置している名古屋工業大学が、これまで実践してきた12社の例を紹介している。
技術革新の激しいこの時代は、新製品開発の設備や人材を企業がすべて自前でそろえるには負担とリスクが大きい。日本は、国際的にも技術開発投資はトップクラスであるが、国際競争力となると世界の20番目にも入っていない。今こそ産学が連携し、効率的な開発投資で最大の効果を上げる取り組みが重要だ。特に、資金に乏しいベンチャー企業は日本産業空洞化を防ぐ大きな役割を有している。日本のものづくり復活への起爆剤としての、大学の知恵を借りるという産学連携の有効性が理解できる1冊だ。
新書判200頁。定価740円+税。