太陽光発電(PV)システムの普及に伴い、関連する受配電機器や周辺機器の市場が急拡大している。固定価格買い取り制度導入に伴い、メガ、家庭用とも普及が進んでおり、今後5年間は市場拡大が継続するという声も聞かれる。これに伴い、パワーコンディショナーや、ブレーカー、接続箱、端子台、監視システムなど、需要の裾野が広がっている。
再生可能エネルギーの一つであるPVシステムの設置が急ピッチで拡大している。国内のPV市場は、固定価格買い取り制度導入前は住宅用が中心であったが、導入後は1000kW以上のメガソーラーや、遊休地を活用した10kW以上500kW未満のミドルソーラーなど、全国各地で設置計画や建設が進んでおり今後5年間は続くとも言われている。
矢野経済研究所の調べでは、2012年度の国内太陽光発電システムのエンドユーザーに対する販売金額は、1兆3198億円となっており、初めて1兆円の大台を超えた。
内訳は、住宅用が前年比114・2%の7046億円、公共・産業用市場が同545・9%の6152億円で、固定価格買い取り制度開始もあり公共・産業用が急拡大している。
■PV関連で約18兆円
さらに、PV周辺の機器の需要、設置・施工、メンテナンスなどに至るPV周辺で新たな市場が創出されている。新たなビジネスチャンスが発生しており、今後市場は、25年にPVシステム関連では約18兆円規模に成長するという見方も出始めている。
また、日本電機工業会(JEMA)がまとめた12年度のパワーコンディショナーの出荷台数は67万6000台で、前年度比160・7%となっている。総容量でも4・87GWと同242・8%で、非住宅用の出荷が台数ベースで同約10倍、容量ベースで同約15倍に伸びている。
PVシステムは、太陽電池モジュール・アレイ、接続箱・集電箱、受配電盤、パワーコンディショナー、ブレーカー、端子台・コネクタ、ストリング監視システム、避雷器、表示装置、データ収集装置、各種計測器、架台など多様な機器・装置で構成されている。特に接続箱や集電箱、受配電盤には多様な制御機器や開閉器が搭載されている。
接続箱、集電箱には、直流MCB、直流MCCB、交流配線用遮断器、漏電遮断器などの各種の遮断器や開閉器などが使用されている。分電盤には単相3線回路の太陽光発電用漏電遮断器といった専用の遮断器を採用。受配電盤には、高圧真空遮断器、昇圧変圧器などを採用。パワーコンディショナーには、インバータなどの制御機器が使用されている。
端子台では、最近の太陽光発電システムの直流高圧化に対応するため、定格絶縁電圧DC1500Vに対応する各種の端子台が発売されている。活線状態での遮断が可能な遮断端子台や、太陽光ヒューズに対応するヒューズホルダ端子台、最大接続電線サイズ60平方ミリメートルの高耐圧端子台などが挙げられる。
さらに、複数の太陽電池モジュールを直列で配線し、まとまった電力量を得られるようにしたストリングに関しては、ストリングごとに設置可能なストリング監視ユニットなども発売されている。ストリングごとに故障箇所を検出する特定ユニットで、計測されたデータはネットワークに接続することで遠方での監視やデータ蓄積が可能である。定格絶縁電圧はDC1000Vに対応し、1マスターにつき最大30ストリングまで監視できる。パワーコンディショナーを収納した増設用キュービクルのほか、落雷対策やアークフォルト対策が必要なことから、避雷機器やサーキットプロテクタを搭載したタイプもある。
PVシステムの周辺機器として、接続箱・集電箱は、複数の並列回路になった太陽電池出力を一つの回路として束ねる装置で、サージアブソーバ、逆流防止ダイオード、配線用遮断器などで構成されている。接続箱は屋外に設置されるケースが多く、夏季の炎天下や逆流防止ダイオードからの発熱も加わり、接続箱内は高温状態が持続する。
また屋外設置のPVは落雷に遭うリスクが高く、SPD(避雷器)の劣化などによる短絡事故時のアーク放電による発火(火災)を確実に阻止する機能も求められている。
■接続箱は10kWに1台必要
PVシステムの直流系統における接続箱は、10kWあたり1台設置され、メガワットクラスのシステムの場合は接続箱が100台以上必要となる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によると、国内のPVシステムは30年までに10GW以上と予想され、今後も相当数の接続箱需要が見込まれている。
パワーコンディショナーは、インバータ、制御回路、連係保護装置、接続箱などで構成されている。直流を交流に変換すると同時に、電力系統と整合の取れた電力にするため、周波数、電圧、電流、位相、有効、無効電力、電圧変動、高調波などを制御する。さらに、自動運転停止、最大電力追従制御、単独運転防止、電圧上昇抑制、異常時の解析・停止などの機能を持つ。
■ミドルソーラー専用パワコン
パワーコンディショナーは、国内のPVが今後1MW以下のミドルソーラー発電が中心になると予想されていることから、ミドルソーラー専用のパワーコンディショナーが相次いで開発・発売されている。変換効率98・4%を実現した高効率品も出ている。パワー半導体のSiC(シリコンカーバイト)を用いたパワーコンディショナーは、従来の同等機種と比べ、体積・電力損失とも2分の1という、小型・軽量・高効率化を実現している。
PVシステムの構成については、系統連携システムと独立システムの2種類があり、系統連携システムは、標準型と自立切替型がある。
系統連携システムは、PVシステムの電力系統に接続されており、電力会社との連携協議が必要となる。大規模発電の場合は、高圧・特別高圧でも送受電のため、引き込み線など制約が大きく、契約・設計段階から連携点などを意識することが大切である。
系統連携システムには、「逆潮流あり/なし」がある。逆潮流ありは、発電電力を発電所内の電気設備に供給し、発電量が負荷電力を上回った場合、電力系統に供給する。発電量が不足すると、電力系統から供給を受ける。
普及している逆潮流なしは常時、太陽電池で発電した電力より負荷の方が多い場合に用いられるシステムで、発電電力は負荷だけに使用する。余剰電力が発生した場合は、電力会社への系統に逆潮流させないよう保護継電器の設置が必要である。
自律切替型は防災用として設置されるケースが多い。停電時などに電力系統側と切り離し、太陽電池で発電した電力を特定負荷に供給する。蓄電池と組み合わせ、安定供給するケースが多い。
系統連携保護継電器は、系統側やインバータ側に異常が発生した時に検知し、速やかにインバータを停止して系統側の安全を確保しなければならず、設置が義務付けられている。逆潮流あり高圧連携システムにおいては、過電圧保護継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、周波数上昇継電器(OFR)、周波数低下継電器(UFR)、地絡過電圧継電器(OVGR)の設置が必要である。系統連携保護装置については、電力会社との事前協議事項となっており、協議のもとに決定する必要がある。
■PVへの依存高まる
原発事故以降の電力危機と省エネ・新エネへの取り組み機運の盛り上がりで、PVシステムへの依存が徐々に高まっている。今後、発送電分離や電力の全面自由化をはじめとした電力システム改革の動向で、PVシステムを含めた再生可能エネルギー市場の展開が大きく変わってくる。しかし、地球環境に配慮したエネルギーの活用という方向性は一致しており、PVシステムもその流れの中で普及が進むことが期待される。