ものづくり現場での情報・通信・制御の融合化が一段と進んでいる。これにより、エネルギー効率の向上とインターネットを駆使した最適化生産がさらに加速化の様相を呈している。同時にフィールドネットワークの壁を越えたオープン化志向も強まっており、ものづくり現場は着実に変わろうとしている。【藤井裕雄前特派員】
ドイツで毎年開催されている世界最大の国際産業技術見本市「ハノーバー・メッセ2014」が、4月7~11日までの5日間開催された。23万6000平方メートルの展示会場に世界69カ国から約6550社が出展、93カ国約20万人の来場者を集めた。
「インテグレーテッド・インダストリー・ネクスト・ステップ」(次代の産業統合)をテーマに開かれた今回の最大の話題は、ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4・0」の実現に向けた展示だ。
市場のニーズと需要の変化へ同時に柔軟対応できる情報処理能力の高いインテリジェント工場では、機械と設備、それに生産される製品が互いに通信可能な状況になることが求められる。「スマートファクトリー」と表現される次世代工場像のインダストリー4・0は、同展の開催国ドイツ政府が2011年から推進している技術政策で、ドイツの主要企業をはじめ、産官学が参加して新たなものづくりの形を探っている。
インダストリー4・0の実現には、インテリジェントなネットワークと、スマートなエネルギー利用が大きな鍵を握っている。
部品から機械、搬送システムに至るすべての要素をネットワークで接続し、それぞれが自律的に通信を行いながら稼働する。グーグルグラスを見ながら、生産ラインの稼働状況を現場で確認・指示できる。
また、エネルギーシステムの転換でも大きな役割を果たす。自然エネルギーによる環境に配慮した活用だけでなく、分配時のスマートグリッドや使用時のスマートデバイス間では相互に通信できるようにすることで新しい省エネの可能性を開いていくことが求められている。機械と機械の通信であるM2Mもその一つとして活用に期待がかかる。
こうした生産に求められるニーズが変わる中でフィールドネットワークでも変化が出始め、各ネットワーク間の融合が進んでいる。「Ethernet」による通信が融合のための壁を低くする要因を生み出し、ユーザーの求める最適生産の実現を可能にしようとしている。
ハノーバー・メッセでも、出展企業の4分の1はエネルギーの生成、分配、流通、保存に何らかのかかわりを持っており、インダストリー4・0はエネルギーシステムの転換への道筋を示す上でも大きなインパクトを持っている。