分岐点(2014年4月9日)

先日、81歳の制御機器商社の社長にお会いした。待ち合わせの場所に早めに着いたからと言いながら、メガネを外し読んでいた本を閉じた。パソコンの教科書である。会社に毎日出勤するだけでも驚きであるが、パソコン教室に通っているという。八十の手習いで覚えられないよと照れながら、インターネットを使って楽しんでいる話をこちらに向けた。

原稿書きやデータ収集以外にパソコンと向き合わないので、楽しみ方をあまり知らない記者にとって、果たして80歳を超えてから新しいことを学ぶエネルギーがあるのだろうかと会話の中で思案しつつ、大いに刺激をいただいた。他の定年退職者に聞いたら、やはり毎日2時間程度パソコンを操作している。会社勤務時代は部下に任せていたので、「いじった」ことがなかったそうだ。

電子情報技術産業協会CE部会は、ネット利用層、非ネット利用層を対象に高齢者ニーズ調査を行った。結果は、高齢者は「健康維持」や「つながり」が共通の関心事項であり、ネット利用層には何らかの生きがいを持ちやすい傾向がある。IT・エレクトロニクスを使い、受けたいサービスもある。業界にとって大きな潜在ニーズであると見ている。

「残された日々、まだ行ったことのないところに行ってみようという計画もあると思う。しかし何より大切なのは、生きることについて、これまで以上の『深さ』を求めることではないだろうか」「未知の世界に自ら飛び込んで、やったことのないことをやることによって、使ったことのない脳が働き出す」。百歳を超えて今も活躍している日野原重明聖路加国際病院理事長の言葉である。日本はまだまだ成長できると確信した。

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