経済産業省、厚生労働省、文部科学省は、日本の製造業における現状を「2014年版ものづくり白書」としてまとめた。
白書によると、13年の国内製造業は業績が改善しており、株価の上昇、収益の向上、賃金引き上げなどの動きがみられた。景気の回復に伴い、生産も拡大し、中小企業についても業況改善の兆しがみられる。
一方で、13年の経常収支は3・2兆円の黒字となった。10年の19・1兆円と比べると約8割減となり、3年連続で黒字が縮小している。特に貿易収支については8・8兆円と過去最大の貿易赤字を計上している。背景には、原子力発電所停止による火力発電所の稼働率アップによる天然ガス、原油などの鉱物性燃料の輸入増加が挙げられる。
業種別にみてみると、「輸送用機器(自動車等)」は約14兆円の貿易黒字を維持している。また、円安が進行したが、価格引き下げや、輸出数量の伸びは大きくみられない。価格水準によらず販売量の維持が期待できる高価格帯の車種の輸出価格を据え置き、利益を確保していると考えられる。今後、低価格帯の車種は地産地消が進み生産拠点も海外移転し、輸出台数は減少する可能性がある。高価格帯の車種は日本で生産し、先進国市場へ輸出拡大することが期待される。
産業全体では生産拠点の海外移転が年々進行しており、円安下でも直ちに輸出の伸びにつながっていない。一方で、一部新興国における人件費の上昇等を契機に、国内でのものづくりを再評価する動きがある。今後は能力増強を中心に国内投資を拡大しようとする兆しがうかがえる。
国内拠点の役割としては、汎用品を中心に海外展開が進む中、「高付加価値品の開発・生産」に集中する傾向が見られ、ロボットなどの最先端設備の活用や、顧客の多様なニ-ズに対する短納期対応など各社が生産拠点の高度化を進めている。国内投資の拡大、国内拠点の高度化の兆しを確実なものとするためにも、「ロボット」「再生医療」など新市場の創出や、産官学が緊密に連携し、立地競争力の強化が求められる。また、エネルギ-コスト対策、経済連携の促進、法人実効税率の在り方の検討など、政府による支援も必要と考えられる。
海外市場に目を向けると、新たな輸出を担う企業の育成が必要になってくる。特にドイツと比較した場合、輸出を行う中小企業は日本約3%、ドイツ約19%と大きく乖離しており、我が国も大企業のみではなく、裾野広く輸出で稼いでいくことが必要だ。
また、自動車産業を中心に事業変化も起きており、「モジュ-ル化」が急速に進展している。背景としてグロ-バル競争の激化に伴う「車種の多様化」と「コスト低減」の両立、電子部品比率の高まりなどが挙げられる。この「モジュ-ル化」はサプライチェ-ン構造に変化をもたらす可能性がある。部品メ-カ-においては、モジュ-ル化される領域で部品の発注ロットが増加するため、メガサプライヤ-の登場が促進される可能性があり、投資リスク等を見極めつつ、非モジュ-ル領域とモジュ-ル領域の選択を適切に行う必要性がある。
政府も人材育成に対する支援をしている。ポリテクカレッジをはじめとする学卒者訓練、技能者の表彰、女性技能者育成の支援など、成長戦略を支える人材育成施策が実施されている。
今後、日本のものづくりをさらに発展させるため、各企業の技術開発、人材育成とともに、産官学連携をいかに活用するかが重要になってくるものとしている。