「TECHNO-FRONTIER(テクノフロンティア) 2014」 要素技術10分野の専門技術展 注目はロボットの多彩なデモ 

「TECHNO―FRONTIER」は、第27回EMC・ノイズ対策技術展、第29回電源システム展、第23回モーション・エンジニアリング展・第32回モータ技術展・第23回組込みコンピュータ展、第7回メカトロニクス制御技術展、第16回熱設計・対策技術展、第6回エネルギー・ハーベスティング技術展、第6回バッテリー技術展、第9回設計支援システム展の10展の総称で、日本のものづくりを支える先端技術が集結した。

これに加え、集中展示として、センシング技術ゾーン、高効率/トップランナーモータコーナー、特殊環境向け部品コーナー、ワイヤレス給電技術ゾーン、ワイヤレスネットワーク技術ゾーン、小型化・軽量化のための高機能材料・加工技術ゾーンなどが設けられた。また、特別企画として産学官交流技術移転フォーラムも開かれた。

今年の同展の注目企画は、組み立てや塗装ラインなどで活躍する産業用ロボットの技術を、災害救助、インフラ点検、リハビリ、人との共同作業といった新たな分野に活用したロボットのデモンストレーションが多数披露された。

■福島第1原発でも活用へ

そのひとつが、屋内など非GPS(全地球測位網)環境でも自律型電動ヘリコプタが飛行デモを行った。福島第1原発の建屋内部を点検予定の実機で、荷物の運搬、高所点検、災害状況の把握など、幅広い分野で活用が期待されている。

人間の目の届かない所で自律的に飛べる電動ヘリは通常、緯度や経度など飛行に欠かせない情報把握にGPSを使用している。千葉大学の野波健蔵氏らが取り組んでいるGPSを用いない自律飛行は、レーザーレンジスキャナやカメラを使って、自分の位置を推定する仕組みである。この仕組みSLAM(スラム‥Simultaneous Localization and Mapping)を搭載した電動ヘリが、初めて福島第1原発の建屋内部で飛行することになっている。テクノフロンティアでは、福島第1原発の建屋を想定して、建屋に入る予定の実機を用いてデモを行った。FPV(First Person View)により、ディスプレイであたかも自分が飛行操作しているように見ることができる。さらに、実機の操作体験も可能。この非GPS下での飛行技術の活用により、地下街で発生した地震・火災時の避難誘導や、農薬・肥料散布、インフラ点検、プラント施設点検と用途は広がり、需要は増えると予想されている。

「絶対落ちない」を信条に、電動ヘリの開発を進めてきた野波氏の「福島では、現在も13万人が避難を余儀なくされている。原発をいかに確実に廃炉にもっていくかが、福島の将来を考えるうえで重要な課題。福島の未来に貢献したい」との想いが込められている。

また、肘のないロボットアームで人手不足解消と、人と一緒に作業することを可能にする作業ロボ「NECO(ネコ)」も注目を集めた。

現在、多くの工場のラインで活躍する産業用ロボットアームには、ヒジがついており、そのため腕が急激に予測しない方向へ動きだすこともあり、アームの軌道を確保する広いスペースと安全柵が必須となる。もちろん人はロボットアームの近くに寄ることができない。

■”人と一緒にいられるロボ”

こうしたロボットアームの常識を覆す「人と一緒にいられるロボット(co―robot)」の開発に取り組んでいるのが、ライフロボティクスである。テクノフロンティアでは、ヒジのない産業用ロボットアーム「NECO(ネコ)」の最新鋭の実機を使ってデモが行われた。

NECOは世界初の「直動伸縮機構」というアームが伸び縮みする構造を持っており、ヒジがないため、狭いところでも安全に動かせる。デモでは、1メートル四方ほどのスペースの中で、デリケートな電子部品である基板をカウントする作業が行われた。

他にも、小さな箱をひっくり返して特定の位置に移動させるなど、単純作業ではあっても、スペースや機械化コストの問題で、やむを得ず人が行ってきた作業を行うことが可能になる。

ライフロボティクスの前田あみ氏は「日本はこれから生産人口が減り、人手不足が懸念される。微妙なさじ加減とか、見極めといった人間にしかできない作業は人間が行い、その代わり物をひねるとか押さえるといった単純だけれど肉体的につらい作業はロボットが行ってくれる」と話している。

さらに、少子高齢化でニーズが高まる介護・医療向けとして、リハビリ用のロボットも注目されてる。

東京工業大学ソリューション研究機構教授の小池康晴氏は、腕の巧みな動きを再現するロボットの開発に取り組んでいる。

人間は日常生活の中で、ヒジを曲げたり、ものを持ち上げたりする時に、片腕でも30以上もの筋肉の中から、動作に必要な筋肉を無意識かつ巧みに選んで動かしている。その動きをロボットで再現する取り組みで、テクノフロンティアでは、小池氏らが人間の腕の動きと同じ動きをロボットの腕がみせてくれるデモを行う。手首をゆっくり動かす、すばやく動かす、関節を固めるといった動きを、自由自在に、ほぼ同時に再現。自分の腕の動きとロボットの腕の動きを同期化させる体験もできる。

筋肉を動かす時、筋線維には微細な電流が流れているが、それを皮膚上で計測した信号が筋電図であるが、筋電図を読み解けば、普段無意識に使っている筋肉をどう使っているかがわかる。筋肉のモデルを数式でつくれば、筋肉が出している力の大きさが分かり、その数式を変形することで、腕の固さ、姿勢をリアルタイムで推定することができる。

■リハビリ用に期待高まる

この技術の応用として期待されているのが、脳卒中などで上肢にマヒが生じてしまった人へのリハビリ用だ。作業療法士が患者の状態をみながら、「ここまで腕を上げてみましょう」と自分の腕を動かすと、患者が装着した腕ロボットが療法士の腕の動きを再現することができる。このリハビリを繰り返すことで、患者は自分ではできなかった腕の動きを、ロボットを介して新たに学習することができるようになる。

さらに、日本でも15年度からIE3以上の高効率モータの使用が義務づけられることに対応して、モータ各社から規格対応のモータが多数出展をした。

■充実したセミナー、シンポ

一方、テクノフロンティアではセミナーや技術シンポジウムも充実したプログラムで開催された。

23日には3つの基調講演のほか、特別講演会が3日間開催された。

さらに、主催者セミナーとして、23日に「産業オープンネットワークDAY」として、6つのオープンネットワーク団体・ベンダーが行うほか、24日に「スマートエネルギーシステムの最新動向と開発・検証」、25日に「モデルベース開発とスマートエネルギーシステム」で開かれた。

そのほか、「対策技術・設計支援ソリューションセミナー」や「出展者セミナー」も会期中、毎日実施された。

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