ロームは、電力線搬送通信(PLC)規格「HD―PLC inside」に準拠するベースバンドIC「BU82204MWV」を開発し、サンプル出荷を開始した。PLCの簡易なシステム構築が可能で、用途拡大につながるものとして期待している。今年9月からは月産10万個体制で量産を開始する。標準価格は2500円。
HD―PLC insideは、高速の電力線搬送通信として注目されるHD―PLCの組み込みに適した新しい規格。準拠するベースバンドICをM2MやIoT、スマートコミュニティ構築機器などに組み込むことで、既存の電力線を通信のネットワークとして利用することができる。
BU82204MWVは、ARMコアを内蔵。HD―PLC insideのベースバンド処理に加え、多彩なインターフェースを搭載。IC内でTCP/IPなどのプロトコル処理を可能にしている。
ホストCPUとのデータインターフェースには、組み込み用途に最適な「UART」「SPI」を採用。各種センサ類やLEDドライバなど周辺デバイス用には、「I2C」「PWM」「GPIO」を搭載。内蔵CPUで制御することで、簡易なシステム構築が可能となる。
これにより、家電製品などの既存システムから大きな変更を必要とせず、顧客のHD―PLC導入における開発負荷を大幅に軽減することができる。
また、間欠動作機能を搭載し、受信待機時の消費電力を従来のHD―PLC Complete規格と比べ、約30分の1と大幅に低減した。
ソフトウェアのカスタマイズも可能で、スマートハウスの通信規格ECHONET Liteや、SSL(暗号化)などのミドルウェアにも対応する。
HD―PLCは、パナソニックが開発したPLC規格。最大200Mbps以上の高速伝送が可能。大容量映像などのやり取りができ、ホームネットワークが構築できる。
HD―PLC insideは低消費電力で、家電などの組み込みに使用されるのに対し、HD―PLC Completeは通信速度が速く、ルーターなどのPLC通信の基幹や、大容量データを扱う機器を対象に使用されている。