ものづくり現場では、市場のグローバル化、熟練労働者の減少、さらに消費者やユーザー志向の激しい変化に対し、従来の「勘」「こつ」「度胸」から、事前にシミュレーションしておくことで、早い立ち上げと投資リスクの回避を図る動きが強まりつつある。ただ、シミュレーションソフトの利用も先行した費用負担を伴うことから、まだ様子見の企業も多い。日本の製造業が国際市場で戦うためには、こうした数値に基づいた科学的戦略が重要と言われているだけに、早期の取り組みが求められている。
PLM(製品ライフサイクル管理)ソフトに代表されるシミュレーションは、熟練技術者の経験を数値化したもの。
■熟練技術者頼み
製造業の生産計画立案で、稼働前(設備計画段階)と稼働後(生産計画段階)で様々な課題が存在するが、ほとんどの現場で熟練技術者の経験に生産計画立案を頼り切っていると言われている。
オートメ新聞が、FAナビ(東京都港区芝2―3―12、TEL03―6699―3241、天野眞也社長)と共同で「日本の製造業における生産計画の実態」として、「計画力」に着目し、現状の問題点と解決策について調査したところ、製造業の生産計画は「勘」「こつ」「度胸」によって立てられており、多くの製造現場が何らかの課題を抱えながらも依然「人」に頼った生産計画となっていることが分かった。
■数値化ソフト
熟練労働者が減少していく中で、これら熟練の技を継承していくためには、数値化されたシミュレーションソフトを導入して、置き換えていくことの重要性が増している。
シミュレーションソフトを利用することで、「生産計画の精度向上」が進むとともに、「在庫削減」「残業の削減」「納期遅延撲滅」「現場意識の改革」など、多くのメリットが生まれてくる。キャッシュフローの向上にもつながる。
「大量生産」「大量在庫」から、「多品種小ロット生産」「ジャストインタイム生産」に市場の主流が変化しており、生産現場も現状のやり方からの脱皮が求められている。
■必要な先行投資
また、認識としてはシミュレーションソフトの導入を必要としていても、数値化するための投資費用が先行して発生する。
今回の調査でも投資に踏み切れない企業が多く、現状のやり方を変えようとしている企業は少数であった。
すでにドイツを中心とした欧州では国を挙げた新しいものづくりへの取り組みが始まっている。先行した投資が必要になるが、世界市場で勝てる製造業としての見返りも見込めるという経営層の判断も必要になってくることになる。
なお、この調査レポートの内容は、今後本紙に連載する予定である。