ボックス・ラック・キャビネットの市場は、ＩＴ関連でデータセンター、社会インフラ分野で太陽光発電システムやスマートグリッド機器、ＦＡ分野で省エネ関連機器、ホーム分野で分電盤、計測器などでの関連投資が増えて、拡大している。技術トレンドは、熱対策、地震対策、軽量化、省施工、防塵・防水性、セキュリティなどに重点をおいた製品の開発が進み、日進月歩の発展を遂げている。国際規格など市場の変化に対応した新しい動きも見られ、今後もさらなる需要拡大が見込まれる。
ボックス・ラック・キャビネットは、配電機器、制御機器などを収納することから、屋内や屋外において、外部の環境から内部機器を保護するとともに、内部機器への直接接触に対する保護を行う。使用環境、収納機器により最適なサイズや構造が異なる。使用される分野は、電力、石油化学、自動車、電機・電子、情報通信、データセンター、各種施設、ビル、環境装置、工作機械、食品・医薬品・飲料、半導体、液晶、計測、放送設備、医療、交通など多岐にわたっている。
特に活発な動きを見せているのが、移動体通信基地局での情報通信キャビネットや、ＰＶ（太陽光発電）の高圧受電設備用キャビネット、接続箱用キャビネットなど。また、データセンター・サーバルームの電力消費量の増大、それに伴う熱問題に対して、冷却の効率化・省電力化など環境負荷低減が求められており、ラックもこれらの要望に対応するものが増えている。さらに地震などに対処するための耐震、制震、免震性を高めたラックの需要も高まっている。
■キャビネット工業会の規格
キャビネット工業会の規格では、金属製汎用キャビネットの種類は次の通りとなっている。
ａ．形状によるもの＝（１）額縁形（２）合わせ形（３）かぶせ形
ｂ．設置場所による分類＝（１）屋内形（２）屋外形
ｃ．設置方式による分類１＝（１）露出形のもの（２）埋込形のもの
ｄ．設置方式による分類２＝（１）壁掛形のもの（２）自立形のもの
ｅ．保護等級（ＩＰ）による分類
ｆ．用途による分類＝（１）汎用キャビネット（２）専用仕様キャビネット
額縁形とは、前面部にドアまたはカバー及び前面枠を備えたキャビネット。合わせ形は、ドアまたはカバーとボディの縁部がほぼ同寸法のキャビネット。かぶせ形は、ドアまたはカバーがボディ縁周部を覆いかぶす形状のキャビネット。
屋内形は、屋内使用に適する性能を備えたキャビネットで、屋外形は、雨・雪・露・風及び直射日光に暴露される場所での使用に適した性能を備えたキャビネット。
壁掛形は、壁面など垂直面に取り付けることを意図したキャビネットで、自立形は、床面に固定して設置することを意図したキャビネット。
保護等級（ＩＰ）は、危険な箇所への接近、外来固形物の侵入及び水の浸入に対する保護の程度等を規格で定め、等級に分け、ＩＰという記号で示している。屋内の標準使用状態で使用されるものについては、ＩＰ２Ｘ以上の性能を有すること、屋外の標準使用状態で使用されるものについては、ＩＰ２３以上の性能を有することが定められている。
キャビネットの構造は、丈夫で各部は容易に緩まず、堅固に組み立てられ、さらに、次の条件が求められる。
（１）キャビネットは、造営材に堅固に取り付けられる構造とし、入力及び出力の配線が容易に出来る構造でなければならない（２）キャビネットは、構造が丈夫で、内部機器組み立て時（床置き状態）においてドアを開いた状態で各部に変形がなく、設置状態においてドアの開閉を頻繁に行った場合に各部が容易に破損する恐れがないものでなければならない（３）パッキンは吸湿性が少なく、かつ劣化しにくいものを用いなければならない（４）キャビネットを構成する金属製のボディ本体、前面枠、ドアは、組み立てられた状態で、相互に電気的に連結もしくは連結できる構造でなければならない。
キャビネットの外郭に使用する材料は、通常の使用状態で生じる機械的、電気的、熱的、化学的影響及び、湿度の影響に耐えるような材料でなければならないとされており、使用条件を考慮して、適当な材料の使用、メッキ、塗装、その他の方法で有効にさび止めすることになっている。
材料のスチール、ステンレス、アルミ、樹脂などには、それぞれ特徴がある。スチールは重いが、耐久性に優れており、多種多様な機器を収納できるシステムラックなどにも適している。ステンレスは、耐食性、耐候性に優れる。
樹脂製のボックスは、軽くて絶縁性に優れ、サビにも強いことから、沿岸地域をはじめとする特殊環境などでも活用でき、電波を通すため無線アンテナの収納にも適している。樹脂の種類も近年はさまざまなものが使用されている。
ボックス・ラック・キャビネットは、技術的には、地震対策、熱対策、軽量化、省施工、防塵・防水性、粉体塗装などが重要なポイントとなっている。
■耐震、免震、制震対策
地震対策としては、耐震、免震、制震がある。耐震は容易な地震対策の一つで、地震の揺れに耐え、構造物の倒壊を防ぐ。耐震対策を施したラックは強固で倒壊する心配はないが、地震時の機器への負担が一般的に大きくなり、機能保護には対応していない。免震は構造物と設置面の間にベアリングやすべり材を設置し、構造物に直接揺れを伝えない。制震は、超高層ビル・住宅や橋梁などに実績がある揺れを吸収する最新技術。制震ラックは制震ダンパーが変形することにより、地震エネルギーを吸収し、ラック内の揺れ、および変形を低減し、連続する大地震にも効果を発揮する。
■遮光板で温度上昇抑える
熱対策としては、屋外用では遮光板を設け直射日光による温度上昇を抑えたり、扉やボディに換気口を設け、放熱効果を高めたりしているものがある。パンチング材の採用により通気性を持たせ、天井面のスリット加工と突き出し扉の上面スリット加工により、天井コーナー部の熱がスムーズに排出され、背面から抜け出せずに回り込んだ熱が突き出し扉の傾斜面からスムーズに排出される仕組みをとったりしている。
軽量化、省施工の利点としては、薄板などを使用した軽いボックスは、高所などでの施工性が高まる。軽量の場合、外壁への取り付けなども楽に行える。
粉体塗装が増加傾向
塗装は、粉体塗装が増加傾向を見せている。耐久性（耐候性・耐塩性）に優れた高厚膜が得られ、塗料は回収して使えるため省資源、しかも有機溶剤を含まないため環境にやさしい塗装となる。
ボックス・ラック・キャビネットの最近の動きとしては、ＩＴ機器、インターネット、ＬＡＮ、ＣＡＴＶなどに用いられる通信機器を収納するためのシステムラックがデータセンター・サーバルームなどで大量に採用されている。
省エネや環境面から設置が増えているＰＶ関連システムへも普及が進んでいる。接続箱は、複数の太陽電池モジュールにより発電した直流電力を一つにまとめ、パワーコンディショナに供給するための盤。屋根に水平設置することで、設置コストの低減と設置場所における日射効率の改善が図れる水平設置タイプもある。
■中継ボックスの需要増える
中継ボックスも需要が増えており、ボックスには鋼索機械制御、開閉装置、配電、計装関係などのケーブル接続用端子が入るが、試験を積み重ねることで品質を高め、ボックス本体と端子ユニットを一体構造とした基本設計のものなどがある。ＨＥＭＳ（ホームエネルギーマネジメントシステム）と連携して家中のエネルギーの「見える化」を進める通信計測ユニット用のボックスも今後、需要が見込まれる。
近年、機械安全に対する考え方は急速に欧米化しつつあり、機械類の安全性―機械の電気装置（ＩＥＣ６０２０４―１）に基づき、安全を意識した設備作りが必須となってきている。こうした国際化に伴い、キャビネットにおいても安全規格の合致、輸出、国内外仕様統一の要求が高まっており、ＣＥやＵＬなどの海外規格取得の動きも進んでいる。
■安全性・高品質追求の新製品
電機・電子機器を収納するボックス・ラック・キャビネットは、分電盤、制御盤、弱電機器収納など使用目的も幅広く、設置場所も身近な家庭から学校、オフィス、病院など人の生活するあらゆる環境に設置されている。今後も大震災対策の耐震ラック、太陽光発電システム用接続箱、移動体通信の中継ボックスなどで需要は大きく伸びる見込みだ。
また、メーカーでは耐震試験、短絡試験、防塵防水試験、日射試験、ＥＭＣ試験、環境試験など十分な試験検証を行い、安全性・高品質を追求した新製品を開発、より安全で使いやすい製品改良にも結びついている。”
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