幕末、明治期にそれまで日本にはなかった概念の言葉が英語で入ってきた。それらを日本人が分かりやすく受け入れるために新しい日本語をつくった。自由という言葉は、福澤諭吉がつくったと言われている。リバティは、束縛から解放された状態であるという意味から「みずからをよしとする」と訳して「自由」という言葉をつくっている。
自由が自らを由とするのであるなら、自動化の自動はみずからが動くということになる。何がみずから動くのかといえば当然、人が動かさなくても、機構がみずから動くことである。自動制御となると、機械がかってに動くのではなく、制御された方向に思い通りに動くことである。人が操作して機械を思い通りに動かすことは機械化、または半自動化の言葉が当てられる。
これまでに生産力強化や生産効率アップ、あるいは品質向上のために自動化投資を積極的に行ってきた。その甲斐あって製造工程の自動制御化はかなり進んでいる。現状で自動制御化をしていない工程は、自動化すると採算に難がある個所だ。だから生産力の増強を海外に移している企業では、国内工場の自動化投資は細っている。
これからの物づくりの世界は、グローバルに対する物づくりと国内ローカルに対する物づくりの二面性を持つので、それぞれの対応を変えなければならない。グローバル競争は一段と激しさを増すので従来にも増して、自動機械設備の需要は旺盛になる。今後も営業マンの垂涎の的となるだろう。地産地消という観点から国内需要に対する物づくりは設備の面で、従来からの延長線にある大型の自動化設備投資は少なくなるし、省力自動化はかなり進んでいるから設備投資の軸足を他へ移していくだろう。
大筋の自動化が済んだ工場も、物づくりの永遠のテーマである生産性の向上と品質向上への投資は続けていく。また近年、物づくりでは社会的責任を標榜した安全や環境への投資は増えていく。
一方、内需を狙った製品開発は成熟化していく社会の変化に対応して新製品や新産業を生み出していくことになる。
新製品や新産業は、セグメントされた小市場を形成するため少量の需要となるし、セグメントされる市場は多岐にわたるため多様な物を生み出す。
したがって国内需要に対する物づくりに関しては製品開発設計の現場では一体、何が始まるのか、を知るのが一番である。
業務用機器のメーカーで言えば、これまでコンビニ、カラオケ業、飲食業、大型店舗などのサービス業向けにコーヒーサーバー、フードプロセッサーをはじめ数々の製品が生まれたが、これからもサービス向上、利便性を追求した製品ができるだろう。
農林水産分野では野菜、魚の洗浄、選別、ピッキングや農業ハウスの電化に必要な機器が増える。ペレット活用のストーブ、発電機の市場も広がる。健康・介護の分野では各種のフィールドロボット、床ずれ防止、認知症向け機器などへの参入が中小企業を中心に増えていく分野である。
社会インフラ分野では、鉄道・道路・電力向けに新製品の開発が活発である。セキュリティ分野では世相を反映して監視機器、入退室管理、大型店舗の管理機器、マンション機器が増えてくる。
この他にも先端技術を支える理科学機器や事務器、環境機器、娯楽機器、厨房機器など新しいものが次々生まれる。製造現場に入る測定器、安全・環境機器、ネットワーク機器など新たに開発されていくので、国内需要向けの物づくりには新しい目をもって臨まなければならない。
(つづく)
(次回は10月22日付掲載)