ライン能力の検証が十分に行われない原因としては、以下の背景がある。
1.時間の不足‥商品の仕様確定までに時間がかかり、装置の立ち上げに掛けられる時間も短くなっている。そのため、設計してからシミュレーションをしている時間的余裕がない。これはシミュレーションをしなくとも装置が作れてしまうことの裏返しであり、経験豊富な設計者と現場の調整・改善努力に依存してしまっていることが背景にある。
2.信頼性の低さ‥シミュレーションのベースになる数値の精度が低いため、シミュレーションの結果があまり当てにならない。精度の高い数値を集めるためには、作業者による生産性のバラつきなども考慮した数値化が必要だが、組織の分断により現場の協力が得にくいことも多い。
3.やり直しによる工数ロス‥シミュレーションを実施したとしても、後から仕様変更になればもう一度やり直しになる。それなら、シミュレーションしない方が工数をかけずに済むということで、従来通りの方法で設計から立ち上げまでを進めてしまう。
その結果、装置の性能検証が技術者の経験に依存することになる。経験豊富なスタッフが設計すれば問題は出にくいが、経験の浅いスタッフに当たれば誤差が大きくなり、問題を引き起こしてしまうことになる。
少子高齢化が進行している今、熟練した技術者はさらに不足していくことが考えられる。まして、労働力の流動化、生産人口の減少などで、技術を継承できる「人」がいなくなることが容易に想定される。装置設計における検証は、取り組まなくてはならない重要課題なのである。
では、検証が行われるようにするには、どうすればいいのだろうか。
次号では、「ライン能力の検証メリットを享受する要素」を掲載する予定。
(つづく)