日本の製造業における生産活動では、各社が様々な課題を抱えている。概して言えば、生産計画が立てられない、生産計画通りの生産ができない、それゆえに、部分最適による非効率が多々存在している。
結果として、作業遅延を賄うために残業の人件費が上昇したり、欠品を防ぐための過剰在庫が資金効率を悪化させたり、ライン完成後に追加費用を投じて改修を行ったり、といったインパクトをもたらしている。それゆえ、全体最適化を目指すべし、と20年以上前から言われ続けているのだが、各企業が取り組みを行ってはいるものの、効果が出ているのはごく一部にすぎない。現場の声として以下の現状が浮き彫りになった。
1〓市場からは多品種小ロットが求められるため、生産計画は日々複雑性を増している。結果的に、生産計画の立案に時間がかかり、現場に落とし込まれるのは直前になってしまう。
2〓短納期案件のイレギュラー対応が生じたり、仕様変更・オーダー変更による段取り替えが発生したり、計画通りの生産を阻害する要因も多数ある。
3〓組織が大きくなると「現場最適」>「全体最適」が定着してしまう。現場では、与えられた仕事をミスなく着実にこなすことが重要視されてしまう。そのため、「在庫切れ」を極端に嫌い、「在庫の積み増し」「残業による余裕の確保」といった「全体最適」とは逆の方向に判断が寄ってしまう。
4〓「在庫切れ」という最悪の事態は発生しないため、経営側では「在庫過多」というリスクを背負っていることに気がつきにくく、改善が進まないという悪循環に陥る。
5〓結果、良い製品を納期通りに完成できるが、「生産性が上がらない」という問題が発生。
さらに、生産計画の立案についても、十分な根拠に基づいて行われているとは言いにくい。アンケート結果を見ると、大半が社員の経験に依存しているのである。(図1)
次号では「最適な生産計画」を掲載予定。
(つづく)