部品やコンポ商品を取り扱う業界では市場を三つに大分類して商品を製造販売している。民生用市場、業務用市場、産業用市場の三つである。民生用とは軍事用に対して使われていた用語であり、一般消費者向け、家庭用を意味するものだ。したがって民生用とは一般消費者や家庭が使用目的にしている製品であり、その製品に使われる部品やコンポ商品を民生用と言っている。業務用とは企業や学校、公官庁のような法人向けの製品であり、その製品に使われる部品やコンポ商品を業務用という。
産業用とは主として物づくりの現場で使われる機械、機器製品を指し、それらの製品に使われる部品やコンポ商品を産業用と言っている。これまで民生用市場向けの製品は大量につくられるため、そこに使用される部品はとにかく低コストを求められた。その部品を納入するチャネルは部品メーカー直接であるか、部品メーカーが認定する大型の代理商社であった。大量につくられる業務用製品も、民生用製品と同様のチャネルで納入されてきた。
今後も大量につくられる民生用・業務用製品に使う部品は、同様のチャネルで納入されるだろう。
しかし今後の成熟社会ではどの家庭も、どの一般消費者も欲しがるような民生用製品ではなく、特定の家庭や特定の消費者をターゲットにした民生用製品の種類が増えるだろう。つまり民生用製品市場は細かくセグメントされるから一種類の数量は少なくなる。細かくセグメントされた分、民生用製品をつくるメーカーも多くなるし、グローバル競争にさらされないので「とにかくコスト」というプレッシャーも弱くなる。したがって民生用部品はとにかく安くというコストが定着してくる。チャネルも、部品メーカー直接や大型の代理商品では賄いきれなくなるから当然、一般の販売店でも一定の利益が確保できる民生用製品の顧客が増えてくる。
業務用製品に関して言えば、事務機器などのように大量につくられる製品の他に業務用というその性質上、民生市場のように市場を細かくセグメントせずとも既に多岐にわたる市場を形成している。したがってこれまでも、それぞれの分野の業務用製品につかわれる部品やコンポ商品は、それぞれの分野に得意な一般の販売店のチャネルで業務用製品メーカーに納入されてきた。業務用製品は法人が購入するものである。法人は存続、成長するために社会の変化に常に対応することを余儀なくされる。したがって社会の成熟度に応じて法人が購入する業務用製品の種類も増える。今後も新しい業務用製品の種類は増殖を続けることになる。新しい業務用機器につかわれる部品やコンポ商品の販売チャネルは大型でも小型でもなく、いかに安くでもない。いかに先に手をつけるかにかかってくる。しかもこれまでのやり方では先手は取れないことが多くなる。
産業用とは民生用に対置する用語であり、業務用との違いは製造業の現場で使われる部品やコンポ商品なので一段と精度や耐久性が求められる。生産力強化を国内工場で行っていた時代には、物づくりにかかわる技術者が総動員で生産設備の自動制御化に取り組んできた。現在では、生産力強化は主として海外に移している。国内工場での物づくり現場では状況に応じて様々な対応しているが、物づくりの永遠のテーマである生産コスト低減、品質向上の他にも、社会的責任のある物づくりにも焦点が当たっている。
(次回は11月26日付掲載)